SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )の達成に向けて、17の目標が掲げられているが、その中でも9番目の目標は「産業と技術革新の基盤に関する目標だ。

SDGs9の具体的な目標、どのような取り組みが行われているのであろうか。今回は、自治体や企業で行われている取り組みについて紹介していく。

SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは?

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SDGsとは2030年までを達成に向けた期間と設定し、経済成長や社会開発を世界規模で実現する取り組みだ。資金面や資源、あるいはインフラ整備など、どれかひとつの分野ではなく、SDGsの達成に向けて総合的に整備や技術力などの向上を進める狙いがある。

SDGsの9番目の目標は「産業と技術革新の基盤をつくろう」と題し、大きく8つのターゲットとなる指標が示されている。

ここからは、SDGsにおける目標9の目的や、目標9が掲げられた背景について解説する。

目標9の目的

持続的な経済成長には、「インフラ」「産業」「イノベーション」の3つの要素が必要不可欠である。これら3つの要素は相関関係にあり、3つの要素を満たすことによって目標9の達成、ひいてはSDGsの達成につながる仕組みだ。

これら3つから構成されているSDGs9の目的は、強靭(レジリエント)なインフラ整備による持続可能な産業化とイノベーションの促進である。強靭(レジリエント)なインフラとは、自然災害があっても早急に復興ができるインフラ整備のことだ。

また、SDGs9は、SDGs8「雇用の創出」やSDGs2「食料の安全」とも相乗効果が期待されている。加えて、SDGs9達成に欠かせないインフラ整備も、SDGs1「農村における貧困」やSDGs11「都市・農村のリンケージ」と密接な関係にある。

つまり、SDGs9の達成を実現することは、ほかの目標達成につながる基盤づくりになるといえるだろう。

目標9が生まれた背景

SDGs9が生まれた背景には、世界全体におけるインフラや産業を含む生活水準の格差がある。

インフラの整備は、生活水準の向上によって安定した生活を実現し、持続可能な産業発展に注力できる環境づくりの基盤になるものだ。そして、インフラ未整備の状態では、企業の生産性も約40%損なわれるといわれている。

しかし、多くの開発途上国では、道路や水、電気、情報通信(インターネット)、衛生施設などのインフラが未整備だ。

世界人口のおよそ1/3が、全天候型道路へ簡単にアクセスすることができない環境で生活しているとされている。全天候型道路とは、振動や騒音の発生がなく、道路全体が耐熱・耐衝撃に優れた安定的な道路のことだ。

また、世界の23億人が基本的な衛生施設を利用できず、12億人が電話サービスを利用できていない現状である。加えて、生活に必要不可欠である水へのアクセスがない人が8億人にも及んでいる状態だ。

ただし、インフラの問題は開発途上国だけの問題ではない。近年増加している自然災害による産業や社会機能へのダメージは、先進国でも懸念されている。

SDGs9を達成することによって、災害によるダメージから早期復旧にもつながることから、災害に強いインフラを整備することも推進されている。

SDGs9の達成に取り組む企業や自治体の事例

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ここからは、SDGsの達成に向けて実際に取り組んでいる企業や自治体の事例について紹介する。

NGP日本自動車リサイクル事業協同組合

NGP日本自動車リサイクル事業協同組合は、自動車リサイクル会社によって構成されている組合だ。組合では、廃車にする自動車の部品を業界全体でリサイクルする取り組みを行っている。

たとえば、リユース部品の販売によって得た収益から、瀬戸内オリーブ基金を通じて香川県豊島環境保全再生活動に寄付しているのもそのひとつだ。

また、リサイクルについて将来を担う子どもたちに向けて、環境問題をわかりやすく伝えるブースをエコプロなどのイベントに出展する形で行っている。

長野県伊那市

長野県伊那市は、MONET Technologies、フィリップス・ジャパンと協業して、モバイルクリニック実証事業を開始している。

これは、日本の地方都市が抱える医療課題の解決に向けた取り組みのひとつだ。

医療機器を搭載した移動診療車「INAヘルスモビリティ」の活用により、遠隔診療が可能な医師の乗らない移動診療車の運用をはじめている。

遠隔地の医師がテレビ電話を通じて患者の診療を行い、移動診療車に同乗している看護師が診療の補助を行うものだ。

長野県上伊那医療圏での人口10万人当たりの医師の人員は151.92名となっており、全国平均237.28名と比べて少ない。

また、山間部など通院や往診にかかる移動コストが高い場所も多く、こうした課題に対してテクノロジーを活用する形で解決を目指している。

SDGs9の達成のために私たちができること

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SDGsの達成に向けた取り組みは、企業や自治体、国など規模の大きいものだけではない。

たとえば、イノベーションによるリサイクル技術の向上や、インフラ整備によって食品流通やゴミの回収処分の効率化が進んでも、個人が協力しなければ効果を引き出すことができない。

つまり、個人の小さな努力の積み重ねが、結果的に国や世界規模でのSDGsの達成につながる推進力になるといえるだろう。

では、私たち個人ができる取り組みには、どのようなものがあるのだろうか。ここからは、SDGsの目標9達成や、SDGs全体の達成に向けて個人でできることについて紹介する。

新たな技術が生活のどんな役に立っているのか考える

まずは、新たな技術が日常生活の中で、どのような役に立っているのかを考えることが重要だ。「地方にいても医療が受けられるようになる」「自動車部品のリサイクルを行っている企業がある」など、企業や自治体の取り組みに目を向けてみるのも良い。

技術をどう生かすことでより便利になるのかを考え、新たな活用方法のアイデアを創出し、発信していくことであれば個人でもできるだろう。

SNSなどで声を上げる

個人でSDGsの達成に向けてできることのひとつに「SNSでの発信」がある。たとえば、人や地球にやさしい取り組みを見かけたらシェアする、政策立案者に対してSDGsの達成を優先課題とするよう求めることも方法のひとつだ。

また、SNSでは日本国内だけでなく海外のユーザーとも情報交換・共有できるため、海外の取り組みにも目を向けることができる。海外で実施されているSDGs達成に向けての取り組みを日本でも同様に実施できないか考えてみよう。

SNSを活用できるのは、インターネットなどの通信インフラが整備されているためだ。技術を利用できる機会をうまく活用し、生活の中でできる範囲のことからSDGsの達成に向けた協力をしていくと良いだろう。

まとめ

SDGsの達成には、目標9を含めてターゲットとなる数多くの要素を総合的に推進・向上させなければならない。

しかし、個人や企業単位では、それらすべての目標達成に協力するのは不可能に近いものだ。

だからこそ、私たち個人が身近にできることを探して協力することは、小さな一歩の積み重ねになり、SDGsの達成に向けた大きな推進力となりうるものでもある。

「個人」「企業」「自治体」「国」それぞれにできることを分担して取り組んでいくことこそが、SDGsの達成に必要になるものではないだろうか。