SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)には、2030年までに達成すべき17の目標が策定されている。そのひとつ目は「貧困をなくそう」という項目だ。

具体的に貧困とはどのような状態を想像するだろうか。

今回は、SDGs1の目標となった貧困問題について具体的に解説し、国内企業の取り組み事例も紹介しよう。

SDGs1とは「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困を終わらせる」こと

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SDGs1を達成するためには、まず解決すべき「貧困」の定義について知っておく必要があるだろう。

貧しさは人や国によって価値観も基準も異なるため、世界の物価データを基に割り出される「購買力平価(PPP)」を参考に国際貧困ラインを決定している。具体的な数値としては、2005年には1日1.25ドル未満、2015年からは1日1.9ドル未満に設定された。

そして、この貧困ライン以下の生活を強いられている極度の貧困状態の人たちを救うことが、緊急性が高く最優先で取り組むべき問題とされている。

2000年に開始されたSDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)による成果もあり、2015年までの25年の間に11億人以上が極度の貧困から抜け出すことができ、残りは7億3,600万人となった。

しかし、未だ世界人口の約1割に相当する人数が極度の貧困層として生活している状態だ。

貧困層が集まる地域には偏りが見られ、約85%がサブサハラ・アフリカそして南アジアに集中している。この地域の貧困率は約41%とされ、うち半数近い人たちが基準以下の生活となっている。

さらに、気候の変動や紛争の多発によって情勢的にも不安定状態だ。状況は今後も悪化していくことが懸念され、回復の余地はない。

貧困の解消は、持続可能な開発のための2030アジェンダを構成する17のグローバル目標のひとつだ。SDGs目標1の具体的な内容は次のように説明されている。

・1.1:2030年までにすべての人が極度に貧しい状態から抜け出す。(貧困の基準は当時1日1.25ドル未満の生活だったが、2015年からは1日1.9ドル未満での生活となった)

・1.2:2030年までに、年齢、性別や子どもに関わらず、各国の基準でのさまざまな面で貧困状態にある人を半分にする。

・1.3:各国で誰もが最低限の生活を送れるような制度や対策を設け、2030年までに貧困層や弱い立場の人たちを十分に保護する。

・1.4:2030年までに貧困層や弱い立場の人、性別などに関わらずすべての人が同じように働く権利を持ち、生活に必要なサービスや土地などのさまざまな財産を保有する権利、適切な金融サービスが使える状態を確保する。

・1.5:2030年までに貧困層や弱い立場の人たちが、異常気象や自然災害、経済的な変化、社会環境のトラブルなどに対して、被害を最小限に抑えるような柔軟な対応力を構築する。

・1.a:多角的に貧困をなくすための計画や政策を実施するために、まずは緊急性の高い開発途上国を中心に適切な支援ができるよう、世界が協力し合って多くの資金を集める。

・1.b:国や地域、世界のレベルに合わせて、貧困層や性別に関係なく平等に配慮された政策を準備し、貧困をなくすための取り組みができるよう資金を増やしながら支援を行う。

SDGs1「貧困をなくそう」が必要な理由

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なぜ貧困をなくすことが目標として掲げられたのか、その理由について解説しよう。

各国の貧困層の現状

世界の貧しい地域には、十分な食料やきれいで安全な飲み水が確保されておらず、衛生施設を利用できない環境で暮らす人たちが多くいる。単純に収入が得にくいというだけでなく、安全で衛生的な生活環境がない現状だ。

そして女性に対して雇用や教育などが十分に行われない地域が未だ多く、不平等な扱いから貧困状態に陥りやすい傾向にある。

また、子供は大人と比べて極度の貧困に陥りやすい。ユニセフの調査によれば、6人に1人の子どもが該当している。これは大人の2倍以上に相当し、貧しい生活をしている人口の約半数は子どもが占めているのだ。

さらに、経済格差は世帯主の職業にも左右され、貧困状態の子どもの7割は農業で暮らしていることが統計で分かった。国や地域によっても貧しさの考え方に違いはあり、生活だけではなく幸福度にも大きく影響を与えている。特に先進国の子どもたちは幸福度が所得に応じて低いという調査結果が出ており、地域格差が大きくなるほどその傾向は顕著だ。

そのため、貧困の問題は日本も例外ではない。

「平成28年国民生活基礎調査」によると、日本の相対的貧困率は15.6%となり、7人に1人が貧困状態である。2012年のデータによると、日本はOECDに加盟している37ヶ国の内、貧困率がワースト7位となった。相対的貧困率については次項で説明する。

根深い貧困問題

貧困問題はさまざまな要因が複雑化しており、ひとつの問題を解決してもすべての解消には至らないのが前提である。

貧困には「絶対的貧困」のほかに「相対的貧困」という概念があり、単純に定義上の基準を上回れば解決できる問題ではない。

絶対的貧困は、定められた貧困の基準以下の生活で、最低限の食事と物資を購入できる程度の仕事が与えられていない状態を意味する。こちらは開発途上国などのように、支援の緊急性が高い貧困状態だといえる。

その一方で相対的貧困は、大多数と比較して貧しい状態を意味するため、地域社会や国によって変化し基準値が一律ではない。先進国や格差が激しい地域に発生しやすい問題で、日本でも改善が求められている。

SDGs1を達成するためには、これらふたつを解決する必要があるため、国内外への幅広い支援が必要になるのだ。

しかし貧困とは連鎖するもので、さまざまな要因で満足な生活が得られなくなると、その子ども世代にも引き継がれ、さらに状態が複雑になるという悪循環が生まれる。

貧困を引き起こす原因をひとつずつ取り除かなければ、悪い流れを断ち切ることはできない。

・十分な教育
・インフラの充実
・食料の確保
・安全な飲み水
・紛争のない安全な地域 など

多くの問題を改善するためには莫大な資金も必要となり、さまざまな側面から全世界の協力が必要なのだ。

SDGs1達成に向けた3つの取り組み

SDGs1達成のためには、複合的なアプローチが必要でほかの目標との関連性も高い。具体的な取り組み内容について説明しよう。

1.社会的保護の整備

社会的保護や社会保障は、最低限の生活を営むために必要な基本的人権である。そして、貧困やその原因を解決するための重要な役割を果たす。

生涯に起こりうるさまざまなリスクに対して金銭的援助を行い、誰もが医療を受けられる仕組みを構築するためには、社会的保護の整備を徹底しなければならない。

世界的にも整備に向けて取り組みが進められているが、包括的な社会的保護プログラムを受けているのは世界の人口の29%である。

さらに現状を改善するべく、SDGsでは以下の目標が掲げられた。

目標3 健康と福祉
目標5 ジェンダー
目標8 働きがい/経済成長
目標10 不平等の解消
目標16 平和と公正

2.基礎的サービスへの平等なアクセス権

基礎的なサービスには、教育や保健、土地を含めた財産や経済支援などが該当する。

貧困をなくすためには、誰もが平等に基礎的サービスへアクセスできることが前提であり、さまざまな方針で取り組みが進められている。

この条件を満たすために、SDGsでは以下の目標が掲げられた。

目標2 飢餓をゼロに
目標4 教育をみんなに
目標6 水
目標7 エネルギー
目標8 働きがい/経済成長
目標9 産業と技術
目標11 街づくり
目標12 作る責任/使う責任

3.強靱性の構築と脆弱性の軽減

貧困な地域の人たちにとって、気候変動などの災害や、経済・社会・環境的な問題は、より深刻な問題に発展しやすく、十分な対策が行えず甚大な被害につながる恐れがある。

被害が拡大すると解決までに長い時間が必要となり、さらに貧困状況が悪化する悪循環が起こりやすい。

そうならないよう、脆弱性を確認してリスクを軽減することで、安定した生活を築くことができる。万が一トラブルが起きた際にも早々の復旧ができるよう備えておくことが重要だ。

その取り組みとして、以下の目標が掲げられている。

目標11 街づくり
目標12 作る責任/使う責任
目標13 気候変動
目標14 海の豊かさ
目標15 陸の豊かさ

貧困をなくすためには企業の協力も必要

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SDGsの達成には企業の力も必要である。ここからは組織で行われている取り組みの具体例を紹介する。

パナソニック株式会社

パナソニックでは「より良い暮らしの創造と世界中の人々の幸せ」を目指し、創業者の意向である「社会から貧困をなくす」ための取り組みを実施した。

具体的には、開発途上国を中心とした絶対的貧困と、国内における相対的貧困の双方を解消するため、NGOやNPOの組織基盤の強化に助力している。

また、電気のアクセスのない貧しい地域へソーラーランタンを寄付する活動も行っている。夜間でも学習できるようになり、重要な教育機会を提供することにつながった。ソーラーランタンは充電や電池が必要ないため、経済的負担の削減にも貢献している。

さらに「かものはしプロジェクト」を発足し、貧しい農村部の雇用を創出して子どもの人身売買をなくす取り組みも実施した。

大和証券グループ

「こどもスマイルプロジェクト」を発足し、深刻化している子どもの貧困問題を解決するための支援を開始している。

貧困の連鎖を止めるために「こども応援基金」の実施し、2019年には2,122万円の助成額を集めることに成功した。

また、公益財団法人パブリックリソース財団をとおし、生活が苦しい子どもたちの思い出のために、クリスマスには「サンタチャリティプログラム」としてお菓子やおもちゃを寄付している。

まとめ

世界人口の約1割は極度な貧困状態での生活が強いられており、地域によって女性は十分な教育や仕事が与えられず、問題解消も難しい状態である。また、貧困層のうち半数以上は子どもであるため、自力では現状から抜け出すことも困難だ。

SDGs1は「貧困をなくそう」という目標を掲げ、多くの課題を解決するために取り組みが進められている。目標を達成するには、企業や個人に関係なく全世界が協力しなければならない。

協和キリンでもその一助となるべくCSV経営を実践しているところだ。
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