要点:

米国の食料品スーパーのトレーダー・ジョーズは、生活支援アプリを展開するマグナスモードと提携し、自閉症患者やその他の認知・知的障害者の買い物を支援するため、画像付きの状況説明カードのセットを同社のアプリで利用できるサービスを開始すると発表した。このサービスは、店内で目に入る物や聞こえる音、レジでの支払いなど、買い物にともなう様々な状況に着目した5種類のカードのセットがマグナスモードの無料アプリ「マグナスカード」に組み込まれている。これらのデジタルカードは、混乱しがちな自閉症やその他の認知・知的障害者が、買い物における一連の行動を一つずつステップを踏んでいけるよう工夫されている。

トレーダー・ジョーズは、食料品店として初めてマグナスモードと提携。今回のサービスは、自閉症啓発月間である4月のはじめにスタートした。

詳細:

多くの米国の消費者にとって、食料品の買い物はただの日課だが、自閉症患者認知・知的障害者にとって、様々な情報と感覚刺激が入り乱れ、ともすれば身動きが取れなくなってしまう環境なのである。

マグナスモードのねらいは、買い物の手順をいくつかのステップに分けることによって、アプリのユーザーがお店で起きることをあらかじめ理解し、練習できるようにすることだ。トレーダー・ジョーズの「Sensory Experiences in the Store(店内での知覚体験)」というカードセットでは、店内で買い物をしていると他の買い物客の話し声やレジの機械音、レシート印刷時の音など、様々な音がするということを説明する。また「Checking Out Your Items(レジでの支払い)」のカードでは、荷物が多くなった場合、支払い時に店員が手伝いを申し出ることを説明し、その場合にどう答えたらよいか、二通りの返答例を示している。

ほかの3種類のカードには、「商品ラベルの読み方」、「パンデミック時の買い物で予想されること」、「リストに沿って買い物する方法」をそれぞれ説明している。

写真提供:トレーダー・ジョーズ

このようなアプリによるカードセットの提供は、トレーダー・ジョーズが自閉スペクトラム症の人々に選ばれるきっかけとなるかもしれない。疾病対策予防センター(CDC)によると、現在全米の子どもの54人に1人が自閉スペクトラム症と診断されている。またこうした取り組みは、トレーダー・ジョーズはだれもが買い物を楽しめるお店だというイメージを、幅広い層の買い物客に伝えることにもなる。

「明るく、誰にとっても快適なお店で買い物をしていただくことは、私たちの最優先事項です」 トレーダー・ジョーズの広報担当ケニア・フレンド・ダニエルはそう述べる。

マグナスモードの創設者であり代表のナディア・ハミルトンは、自閉症の弟トロイのために日常的な身の回りの作業の手順を手書きの絵で説明してみせた経験が、今の活動のもとになっているという。現在同社は、「歯を磨く」、「家を掃除する」、「銀行や図書館、近くのレストランへ行く」といった作業を説明するデジタルカードのセットをアプリで提供している。これらのカードは、歯磨き粉など日用品を販売するコルゲートや、A&Wレストラン、カナディアン・インペリアル商業銀行といった企業の出資により作成されたものだ。

「自閉症の人々にとって、食料品スーパーは尻込みしてしまう場所です。でも、食料品の買い物は最低限必要な行為ですし、何を食べようかと考えるささやかな喜びは、誰もが必要とするものです」と、ハミルトンは両社が公表したプレスリリースで述べている。

この記事は、Grocery Diveのジェフ・ウェルズが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。