2008年に『エコアイランド宮古島』を公布し、エネルギー自給率の向上に取り組んできた宮古島。宮古島とアグリゲーターであるネクステムズがタイアップし推進する、再エネ拡大とエネルギーの地産地消実現へ向けた挑戦について紹介する。

2050年 エネルギー自給率48.9%が目標

『エコアイランド宮古島』公布から10年、2018年に『エコアイランド宮古島宣言2.0』を発表し、“千年先の、未来へ”の標語のもと、5つの明確なゴールを示した宮古島。そのゴールの1つに掲げているのが、〈エネルギー自給率の向上〉だ。2015年にはわずか2.99%だったエネルギー自給率を、2030年に22.1%、2050年に48.9%にするという、具体的な数値目標を定めている。

エネルギー自給率の向上には、再エネである太陽光発電が欠かせない。目標達成には島内の太陽光発電を2016年の22MWから2030年には6倍の128MW、2050年には10倍にまでしていく必要がある。現状でも出力変動で揺れ動くなか、不確実な再エネを主力電源にしていくには、その制御をいかに行なっていくかが、大きな鍵となる。

宮古島は、エネルギーの需給を監視制御するネクステムズとタイアップし2011年から沖縄県の事業を受託する形で『宮古島市島嶼型スマートコミュニティ実証事業』を行なってきた。

ネクステムズ社長の比嘉直人氏は「実証事業開始から10年。前半5年は電力を計測し、見える化にとどまっていました。後半5年を経て、技術革新が進み、EMSより実際にエネルギー機器をリモートで監視制御できるようになってきました」と話す。

実証実験では、各家庭にエコキュートや太陽光発電を分散エネルギー機器として設置し、エコキュートで太陽光エネルギーのピークを吸収しながら再エネをコントロールした。エコキュートのリモート監視と制御によって、電力消費の細やかな調整を図っていった。

2018年度には市営住宅40棟202戸に、2019年度には福祉施設11棟に、太陽光パネルと蓄エネ用エコキュートを設置。

2020年以降は、戸建住宅1,000戸、事業所100カ所、市営住宅60棟300戸への設置が計画されている。

大量に普及した太陽光を上手く使う

変動の激しい太陽光発電をいかに安定化させるかが、太陽光発電の主力電源化の課題。比嘉氏は「確実に安価になる太陽光パネルを前提とし、日射による変動の多い高位出力帯を常時出力制限で取り除いた太陽光発電での普及を目指すのが現実的」と話す。それでも年間トータルで90%の発電力を確保できると言う。

宮古島では大量に普及した太陽光を効率的に使うことを実証している。ただ、天候急変時はついていけず、集中設置すると電圧が上がり、設置したものの発電できない状況などが課題となっている。課題解決には、太陽光と蓄電池を基本的にセットにすることが必要だ。

「現在、システムの中に蓄電池を組み込んだ取り組みも始めています。今後は、太陽光と蓄電池を軸に普及を図っていく計画です」(比嘉氏)

比嘉氏と共に宮古島での取り組みを進めるパナソニック・ライフソリューションズ社の西川弘記氏は「デジタル技術(AI、通信)を活用し、機器(太陽光、給湯器、蓄電池)を群制御することで再エネ導入を促進する需給一体型サービスを行なっていく。需要と供給を一体で管理して再エネ電源をしっかり導入していくことは、パナソニックの役割だと思っています」と話す。

エネルギーの安定供給が課題の離島で再エネ拡大とエネルギーの地産地消が実現すれば、日本の「再エネ主力電源化」や「2050年脱炭素」に向けて大きなイノベーションとなるだろう。

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宮古島