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コンドルは世界最大級の猛禽(もうきん)類
Luis ROBAYO, AFP

南米コロンビアの海抜およそ3200メートルのところにある山道。ロセンド・キーラ(52歳)が静かに薬草を振って誘い出すと、コンドルが雲を割いて滑るようにして飛んでくる。

これを合図に、隠しカメラによる儀式の撮影が始まる。

コンドルはアンデス山脈を象徴する鳥だ。2月中旬、全国100か所にボランティアが配置され、コロンビアで初となるコンドルの個体数調査が行われた。

およそ300人のボランティアの大半はキーラのような先住民だが、中でも彼の持つ先祖伝来の知識は群を抜いている。

キーラは、プラセ先住民居住地に暮らす伝統医だ。彼は岩の上に肉片を置き、セージの小枝を振って香りをつける。

 

もう一方の手には棒を持つ。リュックの中は薬草でいっぱいだ。

するとまもなく、翼の端から端まで3メートルもある鳥が、岩場の上にかかる雲の間から現れ、ごちそうをいただこうと舞い降りてくる。

コンドルも、コンドルが羽を休める岩場も、先住民のココヌコス族にとって神聖な存在だ。

ボランティアは、生物学者によるコンドルの個体数調査に協力している。この世界最大級の猛禽(もうきん)類の保存を助けるためだ。

専門家によれば、コロンビアのアンデス山脈にすむコンドルは130羽しかいない。この地のコンドルは絶滅のおそれがあると、国際自然保護連合(IUCN)は指摘する。

世界的に見ても、コンドルは存続の危機にひんしている

「コロンビア国内に何羽いて、どんな状態なのかを、知る必要があります」。隠しカメラを設置した生物学者のアドリアナ・コリャソスはAFPにそう語った。

この個体数調査は、コロンビアの国立自然公園新熱帯財団(Fundación Neotrópica)などのNGO団体による取り組みだ。

太陽の使い

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コロンビアのプラセ国立公園内で暮らす先住民は、生物学者と協力して、国内で絶滅のおそれがあるコンドルの個体数調査を行っている
Luis ROBAYO, AFP

コロンビアでは、これまでにコンドルの個体数調査が行われたことはなかった。

コンドルは一雌一雄で繁殖する鳥だ。コロンビア南西部のプラセの先住民によれば、彼らの居住区内に少なくとも一対のつがいがいる。それ以外にも、単独の雌を見たという話もある。

隠しカメラによってその謎が解かれることを、生物学者たちは期待している。

「私たちの心がよい状態にあれば、コンドルは舞い降りてきます。コンドルが現れないならば、それは私たちの心に問題があるということなのです」。コンドルを間近に見た後で、キーラは語った。

キーラのコミュニティにとって、コンドルは「太陽の使い」だ。コンドルは差し迫る危機を警告し、気候の変化を予知することができる。コンドルが夢に現れ、病人を治す方法を教えてくれたこともあるとキーラは言う。

コンドルは、北はベネズエラから、はるか南のチリやアルゼンチンまで、アンデス山脈の全域で見られる。

農業と畜産がコンドルのすむ高山地域に広がったことが、コンドルの保護における最大の脅威だ。

そのうえ、雌は2~3年に1個しか卵を産まない。

2018年には、コロンビアの中部で 、毒を食べて死にそうになっているコンドルのつがいが見つかった。自然保護活動家らが何とか助けることに成功し、数ヵ月後に自然に帰した。

だが農家の人たちは、家畜を守るためによく毒物を使う。

コンドルの体重は9~15キロ。腐肉を食べる鳥だが、時には生きた動物を襲うことも分かっている。

「死に等しい喪失」になりかねない

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専門家によれば、コロンビアのアンデス山脈に残るコンドルはわずか130羽
Luis ROBAYO, AFP

「動物種の個体数を知ることが、保全を考える上での出発点になります」と語るのは、NGO新熱帯財団の科学ディレクターであるファウスト・サエンスだ。

3週間後には調査結果の第一報が入るだろうと、サエンスは期待する。

個体数調査によって、今後の個体数を増やす取り組みの中で、雄と雌のバランスを保てるようになる。コロンビアのコンドルの半数近くは、こうした取り組みの一環として飼育された後に、アンデスの自然に戻されたものだ。

プラセの先住民の人々は、この神聖な鳥が隠しカメラをうっとうしく感じるだろうと思っている。それでも、コンドルが生き延びるのを助けたいという思いから、生物学者たちに協力している。

「あの象徴を失うことは、私たち先住民にとっては死を意味します」とプラセ居住地のハビエル・ホホア代表代理は語った。

 

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