農場での食品ロスが米国で大きな問題になっている。そうした中、ある企業が「規格外」(だけど食べられる)の野菜や果物を救い出すと同時に、生産者の新たな収入源も生み出す方法を編み出した。

imperfect produce
Getty Images/Nataliya Kushnir

最近、サンタクララ大学の研究者らが米カリフォルニア州の農業と食品ロスについて絶望的なデータを発表した。米国の農作物の多くが作られている同州では、中央部や北部の34カ所の農場で、まったく問題なく食べられるはずの作物の3分の1以上が腐り、捨てられてしまっているという。ほとんどの理由が、見た目が悪いからだ。米国では、ロメインレタスの外側の葉を取り除いて中心の甘い部分のみを残したものを「ロメインハート」と呼ぶが、ロメインハートの農場では、食用として残される部分よりも捨てられる葉の方が多い。ある農場では、土地1エーカーあたり6万ポンド(約2万7000キログラム)以上が捨てられていた。

農場における食品ロスに関するデータは長年、生産者の予想をもとに作られていた。だが、従来とは違い、研究者が農場でフィールドワークを行った今回の研究で明らかになったのは、予想を上回る結果だった。実際には、廃棄量を一番多く見積もった農家の予想の2.5倍以上もの作物が、捨てられていたのだ。こうした事態は、当然、環境に深刻な影響をもたらす。例えば、食品ロス防止に取り組むNPOのReFEDの予測によると、米国で、毎年食べられることなく捨てられる作物の生産に使われる水の量は、カリフォルニア州、テキサス州、オハイオ州の3州における水消費量の合計に匹敵する。

 

2015年のこと、クリスティン・モズリーは、ロメインレタスの収穫現場を見て、大きなショックを受けた。だが、そこにチャンスも見出した。モズリーは、チェーン展開しているジュースバー企業で、戦略的プロジェクトや事業開発のリーダーを務めていたが、数年前にその仕事を辞めていた。彼女はこう考えた。「ああいう企業なら、高くて『見た目がきれい』なロメインハートの代わりに、不要とされた葉を仕入れてジュースを作るかもしれない。最終的に商品として売られるグリーンジュースは、見た目も味も変わらない」と。「でも一つの企業だけでは、仕組み全体を変えられるほどの需要は作り出せません」とモズリーは言う。多くの買い手と多くの農家をつなげば、もっとよい解決策になるのでは、と気付いた彼女は事業計画を練りはじめた。

その事業は、Full Harvestと名付けられた。Full Harvestは、規格外作物や余ってしまった野菜・果物を取引するオンラインプラットフォームだ。何箱分もの曲がったキュウリや不格好なトマトも、米国農務省(USDA)や業界のトップ企業が定める形状の基準を満たしていなければ、スーパーマーケットのような小売店で取り扱ってもらえない。農家は、こうした商品をFull Harvestに掲載する。すると、ジュースバーやスナック菓子のメーカーなど、一度に大量に仕入れる企業がそれを見て、割引価格で買う。Full Harvestには、売上の一部が入ってくるという仕組みだ。2016年の創業以来、農家は計2800万ポンド(約1270万キログラム)もの作物を、畑で腐らせる代わりにここで売ることができた、とモズリーは話す。

 

ほかにも、一般消費者向けにこうしたサービスを行う企業もある。例えば、Full Harvestに続き、同じように規格外作物のブームに乗ったMisfits Marketがその一例だ。こうした企業の動機を疑問視する声もある。農作物を「救う」というのは環境保護の仮面をかぶった金儲けにすぎず、本来ならフードバンクに寄付されるはずだった野菜や果物が売られることもある、という理屈だ。だが、ReFEDのエグゼクティブディレクターを務めるダナ・ガンダースは、こうしたブームをポジティブに捉えている。「現時点では、規格外作物は山ほどあります。どっちの方がいいとかいう問題ではないんです」と、フードバンクを引き合いに出して非難する意見を一蹴する。「こうしたスタートアップは、規格外作物はスーパーマーケットが思っている以上に消費者に受け入れられることを、証明してくれているのです」

 

2019年、Full Harvestは、世界経済フォーラムが毎年発表しているテクノロジー・パイオニアに選ばれた。テクノロジー・パイオニアは、永続的な変化をもたらすと期待されるテック企業を表彰するものだ。そして2020年には、モズリーはステフィン・カリーとアイーシャ・カリーの夫妻が運営するNPOのEat. Learn. Play.財団と共同で、カリフォルニア州オークランド市とニューヨーク市で新型コロナウイルスにより打撃を受けた農家と食料不足に苦しむ人々の両方を救う活動を行った。2021年2月9日の時点で、10万箱を超える農作物を仕入れて人々に配っている。

「ウィン・ウィン・ウィンの関係ができています」とモズリーは言う。「私たちの技術とリソース、知見を使って食品ロスを防ぎ、生産者の方々を支えると同時に、本当に大変な時期に多くの人々を救うことができました」

 

この記事は、EatingWellのマリッサ・コンラッドが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。