植物由来の代替肉や栄養満点のスーパーフードといった未来の食を支える持続可能な方法として、植物プランクトンなどの「海洋微細藻類」を原料とした新しいタイプの細胞農業に期待が寄せられている。

動物性タンパク質に代わる、健康的で環境にやさしく、持続可能でエシカルな選択肢を求める消費者の声が高まっている。そうした声に応えようと、オーストラリアにあるフリンダース大学の海洋バイオプロダクト開発センター(CMBD)では、ある研究を進めている。

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海洋微細藻類は、海に生育する単細胞の光合成生物だ。この生物が、世界規模の動物性タンパク質不足を解決する一手になるかもしれない。そう語るのは、CMBDの所長も務める同大学のウェイ・チャン教授だ。教授は、オーストラリアの国立海洋バイオプロダクト共同研究センター(MB-CRC)設立に向けた入札の共同責任者でもある。

MB-CRCの使命は、(漁業と水産養殖に続く)三つ目の水産業として、価値ある海洋バイオ産業をオーストラリアで発展させる道を見つけること、そして、同国で芽を出し始めている海洋バイオプロダクト産業を、世界で戦える産業にすることである。

MB-CRCは、サプライチェーンとバリューチェーンをともに強化できるような産業・市場主導型のイノベーションを起こすことに重点を置く。コストの削減や生産性向上を実現するとともに、オーストラリアが世界中の高価値海洋バイオプロダクト市場に参入するための競争力を手に入れるのが狙いだ。

「私たちの研究対象は、バリューチェーン全体です。テーマは、微細藻類の培養や循環型の高度なバイオ製造に始まり、高品質な機能性食品の開発まで多岐にわたります」とチャン教授は言う。

「微細藻類はさまざまな栄養価を備えていて、高度な培養方法を開発すれば、タンパク質や油分、炭水化物をそれぞれ主成分とする品種をつくることができます。そのようにしてできた微細藻類は、さまざまな機能性食品に加工できます。身体にいい培養肉、チップスやパテ、ジャム、キャビアにだってなるのです」

 

現在、市場に出回っているのは、タンパク質を豊富に含むクロレラとスピルリナという2種類の淡水性微細藻類で、グリーンパスタや各種飲料の原料として利用されている。

海に生育する種にも、大きな関心が集まっている。貴重な淡水も耕作地も必要としないからだ。また、海に生育する種には、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)といった長鎖オメガ3脂肪酸など、独自の栄養成分が多く含まれている。これらの成分は、子どもの発育や脳の発達、心臓の機能維持に欠かせない。

さらに、光合成を行う微細藻類を大量に培養するためのバイオリアクターは、温室効果ガスの排出削減や気候変動対策にも貢献する。縦90cm、横90cm、高さ210cmのバイオリアクター1台で、同じサイズの木と比べて最大400倍も多くの二酸化炭素を吸収することができるのだ。

 

「光合成微細藻類は、植物と同じように、日光を利用して酸素をつくり、二酸化炭素を有機炭素(タンパク質、炭水化物、色素、脂肪、食物繊維、微量栄養素)に変えることができます。でも、植物とは違って、貴重な耕作地を使わずに生産可能なのです。

つまり微細藻類は、持続可能な方法で収穫できる上に、環境にやさしいスーパーフードの原料になる、ということです。微細藻類、革新的な生産技術や加工技術を組み合わせることで、激増する世界人口に対処し、タンパク質の持続可能な生産を望む声に応えられるかもしれません」。

加工技術の研究と併行して、CMBDのチームは、廃棄物や収穫した海藻を使って生分解性のプラスチックをつくる研究も、進めている。これも、非分解性の石油由来のプラスチックに代わる持続可能な解決策の一つだ。

研究報告:生体外消化管モデル下でアルギン酸の粘度がカプセル化された生理活性物質の放出に及ぼす影響

 

この記事は、SpaceDaily.comで執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。