SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )は、さまざまな分野で目標達成のために取り組みが行われているが、農業にも深い関わりがあることを知っているだろうか。

農業の発展は、多くの目標の達成につながる重要な役割があるのだ。すでに国内でも新たな研究や施策が進められている。

そこで今回は、SDGsと農業の関係性について解説し、多くの取り組みについて紹介しよう。

SDGsと農業の関係性とは

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SDGsは2015年9月に国連サミットで採択され、世界中の人々が平等かつ安全に生きることのできる社会を作るため、2030年までに達成する目標を掲げた。

全部で17のゴールと詳細な課題が169定められており、日本国内でも2016年にSDGs実施指針を策定している。

その中でも、農業・食品産業は自然資本や環境に立脚していることから、多くの目標を達成するために貢献できると期待されているのだ。

消費者の行動やほかの分野からの投資を主導することで、新たな成長につながる可能性があり、率先した取り組みが進められている。

農業の成長と発展は多くの課題の土台となり、食料・環境・経済などさまざまな問題の解決につながることだろう。

農業×SDGs その1   :食料を供給すること

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農林水産物・食品の安全性の向上は、安定的に食料を供給するためには欠かすことができない取り組みである。

現在、生産資材についても最新の科学的な知見に基づき安全と品質を確保することが実施されている。

それでは、農業が食料の供給をとおしてSDGsにどのように関わっているのか見ていこう。

該当するSDGs目標は「飢餓」

安定した食料の供給は、目標2「飢餓をゼロに」に大きく貢献する。

目標達成のためには飢餓を終わらせ、食料安全保障を実現し、栄養状態を改善するとともに、持続可能な農業を促進しなければならない。

国内の食料自給率は、2018年度は供給熱量ベースで37%となっており、農地面積が減少していることや収  穫量の伸び悩みが影響して低下傾向で推移している。

また、栄養状態としても20〜30歳代ではバランスが偏る傾向にあり、80歳以上の約2割には低栄養が確認できる状態だ。

しかし世界に目を向けるとさらに状況は悪く、異常気象や水資源の制限などさまざまな要因によって生産量が減少し、栄養不足の人口は2017年で3年連続の増加傾向にあった。

世界中で生産されている食料としては、すべての人が食べるのに十分な量が生産されている。それにも関わらず、現状では6億9000万人がいまだに毎晩空腹を抱えている。

世界の飢餓人口が増加に転じる中、栄養のある食料をすべての人に供給できるシステムの構築が急務であり、それこそが「健康・長寿の達成」を実現させるために重要なのだ。

農業を通じて食料を供給する取り組み

農林水産省が行っている食料供給の取り組みとしては、国民の健康状態や高齢化に合わせて介護食品の開発やスマートミールの普及などを推進し、食による健康管理を支援するサービス  が挙げられる。

また、科学技術イノベーションの活用も目指し、AIなどを用いたスマート農業の実証プロジェクトを2019年度より開始した。

より詳しい記事はこちらを見てほしい。

>>農業へのAI活用で食料危機に備える

世界的な食料不足に対しても、栄養改善の国際展開を行っている。「栄養改善事業推進プラットフォーム」を発足して、日本企業の栄養改善事業の国際展開の取組を支援し、途上国に向けた食品供給事業を海外の関係機関とも連携して行っているのだ。

供給面だけではなく、食品ロスや食品リサイクルに関しても取り組みを実施し、食料の無駄を無くすことも同時に目指している。

さらに、高齢者などを中心とした買い物弱者・買い物難民といわれる人たちのために、食料品アクセス問題ポータルサイトを立ち上げた。

こちらでは、食料品の購入や飲食の不便を解消できるよう、施策や調査結果などの情報を積極的に発信している。

 

農業×SDGs その2  :環境問題を解決すること

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農業は食料問題だけではなく、環境保護のためにも解決すべき問題がある。具体的な関連性や取り組みについて解説しよう。

該当するSDGs目標は3つ

SDGsのうち環境に関わるゴールは、目標12「つくる責任つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標15「陸の豊かさを守ろう」など  があり、それぞれに農業は関わりがある。

農業を行うことによって環境に負荷が生じるリスクがあり、農薬の不適切な使用は周辺の環境に悪影響を与え、施設園芸の加温や農業機械などで燃料を使用することによって温室効果ガスが排出される。

農地からは一酸化二窒素、水田からはメタンが発生するなど、さまざまな面で配慮する必要がある。

一方で環境からの影響も強く受け、近年の温暖化が高温障害や豪雨・台風などを引き起こし、日本の農業は広範囲で被害が出ているのだ。

また、担い手が少なく農林水産業の活動が低下していることも要因となり、従来では身近に見られていた品種が減少している。

さらに地域特有の自然環境も変化しており、野生鳥獣による農作物被害が深刻な状況になっている。

これらの課題は、SDGsの目標を達成するためにも重要であり、安心安全な生活のためには早急に解決するべきだろう。

農業を通じた環境問題の取り組み

環境問題が深刻化しているものの、国内の消費者は環境へ配慮した食品への関心がまだ低い現状にある。

また、持続可能な農業で作られた農産物を選びたくても選択肢が少なく、諸外国と比べても消費額が圧倒的に低い。

この状況を打破するため、現在では国や企業が  環境保全型農業や有機農業の推進を図り、化学肥料や農薬などを使用せずに環境負荷を軽減し、自然の循環機能の増進を目指している。

環境に配慮した農業を行って、エコファーマー制度により持続性の高いことが認定されると、農業改良資金の特例措置が受けられるようになる。

加えて有機JAS認証によって、商品には「有機」や「オーガニック」などの名称を表示できる。この認証によりさらに高い信頼を得ることができるだろう。

このような認証制度のほかにも、販売促進のために、地域生産物をブランド化することで、消費量を拡大させる取組が進められている。

環境に対しては、省エネ型施設園芸設備の導入や省エネ農機の普及によって、温室効果ガス排出量の削減を目指す。

農地や水田からのメタンや一酸化二窒素の排出を削減して、農地土壌炭素吸収源対策により農地の炭素貯留を促進している。

そして環境保全を見据え、生物多様性国家戦略として5つを定めた。

・生物の多様性を社会に浸透させる

・人と自然の関係を見直して再構築する

・森、里、川、海のつながりを確保する

・地球規模の視野を持って行動する

・科学的基盤を強化、政策に結びつける

農業×SDGs その3:農業関連の雇用をすること

 

食料・農業・農村分野においても、経済・社会・環境の諸課題に総合的に取り組んでいる。

該当するSDGs目標は「経済」と「技術革新」

目標8「働きがいも経済成長も」と目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」にも該当する農業は、国内外問わず多くの雇用を生み出し、新たな人材育成やイノベーションとの融合を目指している。

技術の進歩によって、さまざまな地域での生産性を向上させることができ、さらなる雇用が生まれて経済を活性化させるだろう。

農業を通じた雇用の取り組み

農業の担い手である人たちを農村へ呼び込むには、所得と雇用機会の確保が不可欠である。

それには農業経営と農村発イノベーションの取組への支援が必要であるため、資金・情報・環境面からのサポートを充実させた。

また農業の6次産業化を行い、1次産業から3次産業までの一体的な推進を図り、所得の向上や雇用確保を目指している。

さらに、成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーションとしてさまざまな取り組みが次々に実施されているのだ。

スマート農業の推進では、最先端技術を活用した経営を目指し、次世代の人材育成を進めて新たな経営者を生み出す体制を構築している。

地域活性化のために、農泊などの魅力的なコンテンツを充実させる支援も行われ、今後の安定的な農業の推進に向けて農業経営者向けの交付金も設けられた。

これらのように、SDGsの目標達成につながる農業に対して、現在多くの取り組みが行われ、同時に期待も寄せられているのだ。

まとめ

今回はSDGsと農業の関係について解説してきた。

農業は、世界の食料不足を救うための重要な要素である。

また、経済や技術革新、環境問題とも深く関係しているため、温暖化対策やイノベーションの活用などさまざまな取り組みが行われているのだ。