2030年までにより良い世界を目指す目的で、国連サミットによって設定された国際目標をSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )という。17の目標で構成されており、世界中の個人や組織、そして国など、世界全体が取り組むべきである。
そして、SDGs13番目の目標には、世界の気候変動の課題解決の内容が設定されている。この記事ではSDGsの目標13は、どのような内容か、取り組み事例も含めて紹介する。
SDGs13「気候変動に具体的な対策を」とは?
SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )13番目の目標は「気候変動に具体的な対策を」である。気候変動によって引き起こされる深刻な自然災害を軽減するために設定された目標だ。
この項目では、SDGs13の目標「気候変動に具体的な対策」の概要を解説していく。
目的:気候変動による影響を大幅に軽減する
自然災害の影響を最小限にすることを目的としており、以下の3つのターゲットで構成されている。
“13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。”
“13.2 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。”
“13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。”
そして、これらの課題を達成するための具体的な手段として、13.aと13.bのふたつのターゲットが設定されている。
13.aは、開発途上国で実施される緩和行動の透明性を確保するため、2025年までに年間1,000億ドルをあらゆる供給源から動員するなど、できる限り迅速に資金を集めて緑の気候基金を本格的に始動させることを目指す。
13.bでは、後発開発途上国や小さな島で構成される開発途上国の、女性や青年、地方、社会的に疎外されたコミュニティなども見落とすことなく、気候変動に関する効果的な計画策定と管理能力を向上するためのメカニズムの推進を目指している。
出典:「SDGグローバル指標(SDG Indicators)」(外務省)
深刻な自然災害を防ぐには、原因となっている気候変動に対処する必要がある。そして、一部の国と地域だけではなく、世界中で気候変動の政策を計画に盛り込むことが求められる。
気候変動の深刻な影響を防ぐためには、多くの人が気候変動による影響を知ることが重要だ。早い段階で、多くの人が気候変動に関心をもてるような取り組みが目標として掲げられている。
以上のように、SDGs13は、多くの人が気候変動や関連する影響に関心をもち、世界全体で対策を行っていくための目標として設定された。
関連キーワード:COP21/パリ協定
COP21は、2015年にフランスのパリで開催された「気候変動枠組条約第21回締約国会議」のことである。この会議は、2020年以降の温暖化対策の枠組みを、すべての国連加盟国の合意のもとにつくることが目的で開催された。
すべての国が参加したのは歴史上はじめてのことで、公平な合意が得られた会議である。そして、パリ協定が採択されて2016年に発効された。
現在のパリ協定の概要には、以下のような内容が定められている。
・すべての国の長期目標として、気温上昇は2℃より低く保つことを目指し、1.5℃に抑える努力を追求すること。
・すべての国が、温室効果ガスの削減目標を5年ごとに提出し、目標を更新すること。 ・先進国による資金提供に加えて、途上国も自主的に資金を提供すること。 ・途上国と協力し合う「二国間クレジット制度(JCM)」も含めて市場メカニズムを活用すること。 |
日本の温室効果ガス削減目標としても、更新しつつさらに改善を追求しているところだ。2015年には、地球温暖化対策推進本部から「2030年度には2013年度比で26%削減する」という目標が発表された。
しかし、2021年には目標の数値を46%削減に引き上げ、さらに50%削減にも挑戦することを表明している。
また、2020年には当時の菅総理大臣によって「2050年までに温室効果ガスをゼロにするカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言された。
SDGs13はなぜ必要?「気候変動」の現状
SDGs13の重要性を確認するため、IPCCの「第6次評価報告書」を参考に気候変動の影響と将来予測について解説する。
参照:「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書」(環境省)
人間活動によってあらゆる気候の変化が起きている
日常生活や経済活動などを含め、さまざまな人間活動は大量の温室効果ガスを排出することにもつながり、気候変動に大きな影響を与えている。
温室効果ガスの影響で地球全体の温暖化が進行し、極端な高温状態となっている地域が増加した。大気だけではなく、海や南極大陸などの雪氷圏、多くの生態系など広範囲に変化が確認されている。大雨が発生する地域も増えており、特に北半球での増加が目立っている。
反対に、気温上昇による陸地の蒸発散量の増加などから、干ばつ地域も増加傾向だ。アジアや地中海エリア、欧州やアフリカなど幅広い地域で干ばつが増えている。
ほかにも、氷河が溶け出していることや海面上昇なども確認されており、気候変動によってあらゆる現象が引き起こされている。
2100年までの将来予測はいずれも「温度上昇する」
今後の気候変動にはさまざまなケースを想定した予測が行われている。この予測は、温室効果ガスの削減に成功し、2050年ごろには排出量がゼロになるカーボンニュートラルを達成した場合の想定だ。
現在世界が取り組んでいる削減目標を達成したとしても、今後の気温上昇は避けることはできない。しかし、何も対策をせずに温室効果ガスを増加させるなど、最悪のシナリオの場合にはさらに悪い結果が待っている。
最も気温の上昇率が高い予測では、2040年までに1.9℃、2060年までには3.0℃、そして2100年には5.7℃上昇すると考えられており、もし現実となった場合は現在のような生活はできないだろう。
そのため、SDGs13の達成は最低限であり、より早い課題の解決が求められている。
SDGs13の達成に向けた日本企業の事例
SDGs13「気候変動に具体的な対策を」の達成に向けて、さまざまな企業が気候変動に関する取り組みを実施している。企業の取り組みの中から、今回は3つの事例を取り上げたい。
事例1:NTT東日本
NTT東日本グループでは、SDGsでも課題とされている環境問題に関心を寄せ、「環境目標2030」と題し、4つの行動目標を掲げている。
SDGs13と関連が深いのが、社会のCO2削減貢献量を自社排出量の10倍以上にするという取り組みだ。CO2削減のふたつの柱が、NTT東日本グループ全体での節電、情報通信サービス活用拡大の取り組みである。
まず節電に関してだが、NTT東日本グループ全体の事業活動で、CO2排出の大半を占めているのがオフィスや設備の電力使用だ。
社内での電力使用を最小限に抑えることで、CO2の自社排出量を削減する取り組みを実施している。
具体的な取り組みは、電力の大半を占める通信設備においては、空調温度適正化、設備の統廃合や高効率な設備への更新などで、電力使用の削減を進めている。
そして、NTT東日本のCO2削減におけるもうひとつの柱が、情報通信サービス活用の拡大だ。NTT東日本は、提供する光ブロードバンドサービスの普及拡大をとおして、人やモノの移動を減らし、社会全体のCO2排出の抑制を推進している。
事例2:セブン&アイグループ
セブン&アイ・ホールディングスは、気候変動にいち早く対応できるビジネスモデルを構築、そして運用していくことが企業の成長維持につながると認識し、気候変動に対応した以下の取り組みを実施している。
・グループの9割を占める店舗運営に関わるCO2を2050年までに実質ゼロへ
・天気や気温の変化を商品開発や品ぞろえに反映 ・新店や改装に合わせてLED照明や太陽光パネル導入を拡大 ・水素ステーション併設店舗の設置 ・蓄電システムなどを取り入れた次世代型店舗のオープン ・すべての電力を再生可能エネルギーで調達する実験店舗の設置 ・商業施設での電気自動車用充電器の設置 ・リース車両のハイブリッド車への順次切り替え |
以上のように、限りある電力を有効に利用するなど、電力利用の削減や再生可能エネルギーの利用などによるCO2排出削減の取り組みがセブン&アイ ・ホールディングスの特徴だ。
事例3:協和キリン
協和キリンは、親会社のキリンホールディングス株式会社と連携し、Science Based Targets(SBT:パリ協定の水準と整合する中長期目標)に基づいたCO2排出量の削減目標を設定している。
2016年からCO₂排出量の削減を目指し、2020年の排出量を1990年における排出量の85%(38万トン以下)まで抑えることを目標に取り組みを行ってきた。
結果として、2020年の排出量は約28万トンで38%削減という目標を大幅に上回る成果が得られ、今後さらに高い目標に向けて取り組む意向だ。
気候変動が深刻化していることを加味し、2030年には2019年比でCO₂排出量55%削減の目標を掲げた。
また、取り組みの一環として2020年1月からは「アクアプレミアム」の導入も始まった。高崎工場で使用する電力の75%を、CO2を排出しない水力発電由来の電力に切り替える取り組みだ。
ほかにも、協和キリンでは、工場などの太陽光発電設備導入、営業車のハイブリッドカーへの切り替え、グリーン・オフィス・プランの推進でCO2排出量削減を進めている。
気温上昇を抑制するために、私たちができること
ここまで、SDGs13の国際的な目標と、それにともなう企業の取り組みを取り上げてきたが、私たちができる取り組みもある。
日本のCO2排出量の約2割は、給湯や暖房、調理でのガス使用、電気製品の使用、自家用車の使用など、日常生活から発生している。
普段の生活からも多くのCO2が排出されていることを知り、個人でもできるSDGs13の達成に向けた取り組みを意識することが重要だ。この項目では、個人でもできるSDGs13に関連した3つの取り組みを取り上げたい。
出典:「地球温暖化を緩やかにするために私たちにできること」(気象庁)
節電を心がける
ひとつは、節電を心がけること。電力使用量の減少はCO2排出の削減につながる。以下のような行動を意識して、節電を心がけよう。
1.消費電力を減らす
・使わない家電は主電源を切りコンセントを抜く
・不要な冷暖房や照明は消す ・テレビをつけっぱなしにしない ・節電のためにできるだけ家族と同じ部屋で過ごす ・カーテンで遮光するなどして冷暖房の利用を控える |
2.他の方法に切り替える
・消費電力が小さい電化製品に切り替える
・ガス、石油に切り替える |
最近は省エネ製品が増え、消費電力を減らす省エネモードが搭載されているタイプも多い。節電のためには生活の中で意識することが大切だが、普段使う電化製品や使用するエネルギーを切り替えることで消費量を削減することもできる。
買い物するときはマイバッグを持参する
大量のプラスチックバッグは燃やすために、多くの温室効果ガスの排出を必要とする。
CO2の排出を増やさないためには、ゴミになるプラスチックバッグを利用しないことだ。買い物の際は、マイバッグを持参するようにして、できるだけゴミが出ないよう配慮する。
車の使用を控える
自動車は、多くのCO2を排出する。そのため、移動手段には、一度に多くの人を移動できるバスや電車などの公共交通機関、CO2の出ない自転車などを利用するのが望ましい。
自動車を利用する機会が多い場合は、CO2の排出をともなわない電気自動車などを検討する。
再生可能エネルギーへ切り替える
再生可能エネルギーとは、自然を利用して生産できる温室効果ガスの排出を抑えたエネルギーのことだ。
代表的なものとしては「太陽光発電システム」があり、家庭で利用する際は屋根などに太陽光発電パネルを設置して消費電力を補う。使わなかった電力は買い取ってもらえる仕組みだ。
ほかにも、「太陽熱」の利用によって温水を作り出したり床暖房に活用したりすることができる。
最近では、植物由来のバイオマスエネルギーも注目されはじめた。有名なものとしては、エアコンの代わりに木質のペレットを燃焼させて暖を取る「ペレットストーブ」がある。
再生可能エネルギーを活用すると、同じように生活をしていても温室効果ガスを削減できるため、可能であれば導入を検討しよう。
以上のように、小さな心がけでも、多くの人が取り組むことで地球温暖化の抑制や気候変動の深刻な影響を防ぐことにつながる。まずは、できることから始めてみよう。
まとめ
SDGsの目標13は、気候変動の対策に関する目標だ。世界中の国や地域をはじめ、さまざまな企業がSDGs13の達成に向けた取り組みを行っている。気候変動は、日常生活のCO2排出も関係していることから、問題意識ももちやすいだろう。個人でも、できることから始めることが大切だ。