2019年12月、スリランカ政府は、国内生産のあと押しと小規模農家の支援のために、ターメリック(ウコン)など数種類のスパイスの輸入を禁止した。これにより、かつて内戦によって産業がすたれてしまったゴナガーラ村の人々の生活が好転している。小規模農家の支援団体の協力を得ながらターメリック栽培を復活させ、十分な収益を得られるようになったからだ。

著者:ジナーラ・ラーネヤク(コロンボ在住)
Source:The Guardian

 

ひとつまみのターメリック(ウコン)が、ほんのりスパイスの効いたココナッツスープ「ソディ」を黄金色に輝かせる。ソディは、ご飯などの炭水化物と一緒に食べるスリランカ料理だ。

ターメリックは、スリランカのどの家庭でも重宝されているスパイスで、複雑な風味、鮮やかな黄色、強い香りが特徴だ。単なるスパイスとはいえ、インド・スリランカ発祥の伝統医療アーユルヴェーダでは、抗炎症作用があるとされている。

スリランカでは昔からターメリックが栽培されていたが、スリランカ内戦(1983~2009年)の間に、大部分がすたれてしまった。現在では大半を輸入に頼っていて、年間消費量7000トンのうち、国内生産量は2000トンのみだ。

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ゴナガーラ村の農夫。未加工のターメリックの根茎の価格は、輸入禁止以降4倍に跳ね上がった。写真:SAPP

2019年12月、スリランカ政府は、ターメリックを含む数種類のスパイスの輸入を禁止した。国内生産をあと押しし、小規模農家を支援する目的だ。新型コロナウイルスが広まる中、アンパーラ県東部のターメリック農家にとって、輸入禁止はありがたい措置だった。スリランカ最大の都市コロンボから350キロほど離れたゴナガーラ村に住み、農業生産協同組合の代表を務めているダヤラスネ・バンダーラ(54歳)に話をきいた。

「新型コロナウイルスが広まったときは、ターメリックを収穫しても売れないだろうと思っていました」とバンダーラは言う。「でも今年は、以前より高値がつきました。とても儲かる商売になったのです」

市場では、未加工のターメリックの根は1キロ当たり80ルピー(約113円)で売られていたが、輸入が禁止されると需要が高まった。春の収穫が終わると、バンダーラたちのターメリックは1キロ当たり300ルピー(約425円)の値がついた。乾燥させたターメリックは1キロ当たり4000ルピー(約5670円)で売れた。

ゴナガーラ村の農家では、何十年もの間ターメリックを育て、根やその粉末を売って暮らしていた。ところが1999年のある夜、内戦下でこの村の住民およそ50人が虐殺された。「その後も私たちは、内戦による被害を受け続けました。もはやターメリックの心配をするどころか、生き残るだけで精一杯でした」とバンダーラは語る。こうして、ゴナガーラ村からターメリック栽培が消えていった。

 

だが、内戦が終わって10年近くたった2018年、バンダーラは村人たちとともに、農業省の「小自作農農業関連産業パートナーシップ・プログラム(Smallholder Agribusiness Partnerships Programme、SAPP)」に連絡を取り、ターメリック栽培を再開するための支援を求めた。SAPPの副マネージャー、ソマシラカ・ウィジェシンゲは、農民たちと緊密に協力しながら取り組みを始めた。「彼らから連絡をもらい、強く心を動かされました。プロジェクトが承認されると、ゴナガーラ村の農民100人のために、ターメリック栽培推進計画を立ち上げました」とウィジェシンゲは説明する。

大半の農家は、必要な資金をもっておらず、銀行から金を借りることもできなかった。地元の実業家から高い金利で融資を受け、借金がふくらんでしまう者も多かった。SAPPは、スリランカの農村開発銀行と手を組んで融資制度を立ち上げ、ターメリックをゆでて乾燥させるための機械の提供や研修もおこなった。

 

私たちの多くは、ターメリックで得たお金を、子どもたちの教育のために使った

こうして、ゴナガーラ村の農家が再びターメリックを育て始めた。栽培には、牛糞などの有機肥料だけを使った。約1000平方メートルの土地に150キログラムのターメリックの種を植えたところ、2000キログラムの「新しい黄金」が収穫された。

ゴナガーラ村で栽培されている品種には、クルクミンが多く含まれている、とウィジェシンゲは言う。クルクミンは、抗炎症作用や抗酸化作用があると言われるターメリックの有効成分だ。そのため現地では、ターメリックが関節炎などの症状を抑える目的で使われることもある。「ゴナガーラ村のターメリックの色が濃いのは、クルクミンが多いからです。料理なら、粉末をほんの少し使うだけで十分です」

ターメリックの輸入が禁止されて供給が不足すると、価格が急上昇し、闇市場ができた。スリランカ海軍は、南インドからのターメリックの密輸を数件取り押さえた

SAPPのディレクター、ヤサナサ・マパトゥナ博士によると、粉末ターメリックの偽物まで登場したという。小麦粉に黄色い着色料を混ぜたものだった。

「だから、純粋な国内産ターメリックの需要が高いのです」と彼女は言う。

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スリランカ東部アンパーラ県のターメリック畑。写真:SAPP

「今や、国中の農家でターメリックを栽培しています。高い値で売れるからです。日々の料理に使うために、家庭菜園でターメリックを育て始めた人々もいます」

2月末の次の収穫では、国内需要の半分を賄えるだろう。マパトゥナの考えでは、2022年までには、輸出を始めるのに十分な量の収穫が得られるだろうという。

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ゴナガーラ村の農民100人の成功を見て、周辺の地域から150人の農民がプロジェクトに加わった。SAPPは、国内の5つの県に支援を広げるとともに、ゴナガーラ村の協同組合に数台のターメリック粉砕機を設置する計画を立てている。「スリランカにターメリック連盟を立ち上げる予定です。そうすれば、私たちが手を引いたあとも、農民が自分たちだけで事業を続けられます」とマパトゥナは言う。「彼らに自力でやっていけるという自信を持たせたいのです」

ゴナガーラ村では今、バンダーラたちが、ほかの村々にターメリックの種を配っている。

「私たちの多くは、ターメリックで得たお金を、子どもの教育のために使いました。あとは借金を返した者もいるし、自分用のバイクやトゥクトゥク(三輪自動車)を買った者もいます」とバンダーラは語る。「かつて私たちは内戦に苦しめられていました。でも今は、次の収穫で得るターメリックを粉末にし、ゴナガーラ・ターメリックとして市場で販売する計画を立てています」

 

この記事は、The Guardianのジナーラ・ラーネヤク(コロンボ在住)が執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。