米国の環境保護団体オーシャン・コンサーバンシーが実施した「2019年国際海岸クリーンアップ(海岸清掃活動)」では、116ヵ国の海岸で94万人以上のボランティアが9400トンのごみを集めた。その分析結果が、明らかになった。最も多かったのは食品包装で、その他もプラスチック関連のごみが多かった。背景、関係者の声を聞いた。

著者:メリッサ・スミス

Source: Sport Diver

 

米国の環境保護団体オーシャン・コンサーバンシーの「2019年国際海岸クリーンアップ(海岸清掃活動)」で集められたごみの分析結果が、最近発表された。これによると、海岸で見つかるごみの数で、食品包装が初めてトップの座についた。前年までの33年間は、タバコの吸い殻が1位だった。

2019年のクリーンアップでは、116カ国の海岸で94万人以上のボランティアが9400トンを超えるごみを拾った。活動は南極以外のすべての大陸で行われた。参加者が1日で集めたごみの数は、約3250万個。その中には、タバコの吸い殻が420万本、ポテトチップの袋などの食品包装が470万点あった。

The Ocean Conservancy's 2019 International Coastal Cleanup statistics

オーシャン・コンサーバンシーの「2019年国際海岸クリーンアップ」の統計

 

よく見つかるごみの1位から10位は、すべてプラスチックだ(タバコの吸い殻にはプラスチックファイバーのフィルターがついている)。上位には、食品包装のほかにも食品や飲料に関係するものが並んでいる。ペットボトル、ペットボトルのキャップ、ストロー、マドラー、コップ、コップのふた、持ち帰り用の容器、レジ袋などだ。

食品包装は他のプラスチックとは違う問題を消費者に投げかけていると、オーシャン・コンサーバンシーの「ごみのない海プログラム」でシニアディレクターを務めるニコラス・マロス氏はFast Companyに語っている。

「ペットボトルはリサイクルに出せますし、スーパーにはマイバッグを持って行けます。プラスチックのストローを、もういらないと断る人も少なくないでしょう」とマロス氏は言う。「でも、食品を新鮮で、安全で、扱いやすい状態に保つことについては、少し勝手が違います。そのために、メーカーがこれまで研究と努力のほとんどを費やしてきたのが、使い捨てプラスチックの食品包装なのです。埋立て処分場行きにならないパッケージ、人間と海の両方を安全で健康に保つパッケージの研究開発を急ぐことを、真剣に考えなくてはなりません」

毎年恒例のこの清掃活動で回収されたごみは、1986年から一つ残らず記録されている。その数は4億個を超え、海岸で見つかるごみを種類別に記録したものとしては最大のデータベースだと考えられている。研究者は、数十年分におよぶこのデータベースを使って、消費者行動の移り変わりを追うことができる。例えば、ボトル入りのミネラルウォーターが普及するにつれてドリンク缶が減っていった、というような傾向がわかるのだ。初めて10位までのごみがすべてプラスチックになったのは、2017年のことだ。

「オーシャン・コンサーバンシーのデータは、ある時点でのプラスチック汚染の全体像を捉えています。この問題に関心のある世界中の人々にとっては、とても重要なデータなのです」と米ジョージア大学工学部の教授でナショナルジオグラフィックのフェローでもあるジェナ・ジャンベック氏はナショナルジオグラフィックに語っている。「私は19年前にこの問題の研究を始めてから、ずっとこのデータを参照しています」

今回初めて食品包装が1位になった背景には、世界的に喫煙が減っていることと、使い捨てプラスチックへの依存度が増していることの両方があると考えられる。2018年の国際海岸クリーンアップでは、タバコの吸い殻は570万本、食品包装は370万点だった。2019年のクリーンアップでは吸い殻は150万本減り、食品包装は100万点増えている。

「プラスチック包装について、サステナブルな解決策が広く実践されるようになるまでは、タバコの吸い殻とプラスチック包装の順位は何度も入れ替わるだろう」とマロス氏は言う。「この問題は、なんとしてももっと大元で解決しなければなりません。そもそもプラスチックが川などに流れ出て、海に行き着くことがないように」

2020年の国際海岸クリーンアップは9月19日に行われた。新型コロナウイルスの感染拡大のため、ボランティアは一人で活動するか、小グループで互いに距離をとって活動するように、または今回は海岸に行くのはあきらめて、その代わりにどうしたら自分の出すごみを減らせるかを考えてみるように、との働きかけがあった。

参加を決めた人たちは、オーシャン・コンサーバンシーのボランティア用アプリを使って、集めたごみを種類別に記録した。同アプリの最新版には、マスクやフェイスシールドなどの個人用防護具(PPE)が新しい項目として追加されている。

 

この記事は、Sport Diverのメリッサ・スミスが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。