「プラスチック製の袋を使うよりは紙袋を使ったほうがいい」という意見を時折、耳にするが本当だろうか? 専門家による調査結果によると、紙袋も製造過程で環境に負荷をかけているので環境に優しいわけではない。プラスチック製の袋と紙袋の環境負荷を検討し、どちらが環境に優しいか、私たちはどうすべきか考えた。

カナダでは、国をあげて毎日発生する大量のプラスチックごみを削減しようと取り組んでいる。それは素晴らしいことだ。でも紙袋のような代替品を当てにすると、あまり環境に優しくない結果を招いてしまうかもしれない――専門家による複数の調査結果がその可能性を示していると、カナダ放送協会(CBC)は報じた。

「どんなものでも使い捨てはよくありません。私たちが使うものはすべて、環境に予想もつかない影響をもたらします」と語るのは、ハリファックスにあるダルハウジー大学大学院環境・資源科学専攻助教のトニー・ウォーカー氏だ。「使い捨ての消費スタイルを別の方法にただ切り替えるだけのやり方には、くれぐれも注意が必要です」

プラスチック製の袋を使うより紙袋を使った方がいいと思われているが、紙袋はまったく環境に優しくない。北アイルランド議会が2011年に発表した研究論文を見れば分かる。「プラスチック製の袋、紙袋、布袋による環境への影響の比較」と題したこの研究では、「紙袋の製造には、プラスチック製レジ袋の製造の4倍以上のエネルギーが必要」なことが明らかになった。

「紙はまちがいなく環境に影響を与えます。しかも、何百万枚もの紙袋を作って輸送するとなると、輸送費と温室効果ガスの点で、同じ数のプラスチック製レジ袋よりも高くつきます」とウォーカー氏は言う。

使い捨ての紙袋と紙ストローを詳しく調べてみよう。

第一に、紙袋と紙ストローは、木でできている。木は炭素吸収源の役目を果たし、二酸化炭素を一時的に取り込んで大気中の濃度を下げる。伐採した木そのものを原料とする紙製品の生産は森林破壊を加速させ、生き物の生息地を奪ってしまう。

一方、プラスチックは、石油の副産物でできている。つまり他の目的で抽出し、処理したものが原料になっているのだ。

第二に、紙袋の生産には非常に多くの資源が使われる。特に多いのが、エネルギーと水の使用量だ。紙製品の生産に使われるエネルギーは、プラスチックより約10パーセントも多いと言われている。さらに紙製品では、プラスチック製品を作るときの4倍もの水が必要になる。

たしかに、再生紙の製品を作ることはできる。ただその場合も、リサイクル処理には未加工の材料から作る以上のエネルギーと水が使われる。第三に、紙袋はプラスチック製の袋より重くかさばる。こんな風に考えてみてほしい。200万枚の紙袋を運ぶにはトラックが7台必要だが、同じ枚数のプラスチック製レジ袋を運ぶのに必要なトラックは1台だけなのだ。

重くてかさばるので、埋め立て地行きになるごみの量も大幅に増える。実際に、紙袋を処分すると、プラスチック製の袋に比べて埋め立て地での温室効果ガスの排出量が3倍から7倍も多くなる。

紙製品は環境への影響がつきまとうだけでなく、原価がプラスチックより驚くほど高い。紙ストローの原価は1本あたりおよそ5~13円だが、プラスチックのストローは1本あたり2円ほどだ。だから、より環境に優しい生活に向かおうとする今日の社会では、紙製品はビジネスと環境のどちらの面でもマイナスなのである。

ニュージャージー州は、店舗やレストランでの使い捨てプラスチック製の袋を全面的に禁止するとともに、スーパーの使い捨て紙袋も禁止することを決めた米国で唯一の州だ。9月の州議会で、法案発効の18カ月後から禁止にすることが承認された。

プラスチック製の袋と紙袋の使用にはどちらも賛否両論ある。コロナ禍で世界的に環境の優先度が下がっているが、プラスチック製品と紙製品のどちらを使うかは、いずれ私たちみんなが考えなければならないことなのだ。

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