レストラン「バニー・バニー」のシェフ、ジェニファー・ジャクソンとジャスティン・トゥートゥラは、従業員の勤務日数を減らしたり、フロアスタッフとバックヤードスタッフの給料を同じにしたりすることにも取り組んでいる。


「バニー・バニー」
写真提供:Gerard + Belevender

2020年に新しくレストランをオープンするのは並大抵のことではない。あてにできるほどの常連客はまだいないし、新型コロナウイルスが広まる中、屋外と屋内の席の感染対策をめぐる不安もある。そして当然ながら、家賃の支払いは待ってくれない

だが、ジェニファー・ジャクソンとジャスティン・トゥートゥラにとっては、少し違う。最近、デトロイトにある評判のシーフードレストラン「ボイジャー」を辞めた2人は、新型コロナウイルスのパンデミックが、これまでのレストラン経営を根本から変える機会を与えてくれたという。

「ぼくたちはこの業界で何十年も働いていますが、30歳を超えても時給10ドルで働いてきました。それはおかしいと思うのです」とトゥートゥラは言う。「レストランで、ほかのビジネスと同じような経営ができない理由はありません。従業員を利用するのではなく、彼らに利益を提供することができるはずです」 

2人が今年8月にデトロイトにオープンした「バニー・バニー」は、チャイニーズ・アメリカンのレストランとして、持ち帰りメニューだけで静かに営業を始めた。この店のコンセプトは、いくつかの点で興味深い。まず何より、トゥートゥラもジャクソンも中国人ではない。2人はシカゴで人気のバー「ロスト・レイク」で食事を提供するアジア風キッチン「サンキュー」で調理をしていた。その経験を埋もれさせることなく利用しているわけだ。 

「ジェニファーは南部出身です。ぼくは半分東インド人なので、異なる文化の血が流れています」とトゥートゥラは話す。「しばらく前から、料理人は、自分が何を表現するかを意識しなければならなくなっています。特にこの1年は、その問題に取り組み、率直に語り合うというぼくたちの責任が、ますます大きくなったと感じます」

「ぼくたちはずっとチャイニーズ・レストランをやりたいと思っていました」と彼は続けた。「でもそれには、どうやって自分と違う文化の料理に責任をもって取り組むか、という課題がついてきます」

誠実なコメントからも、彼らの責任感の一端を感じることができる。また、もっと具体的な形では、利益の1パーセントを地元の中国系アメリカ人団体に寄付するという、この店の方針にも見られる。

「ジェニファーとぼくは、ヨットを買いたいわけではありません」とトゥートゥラは笑う。「ほかの人の文化圏の料理をするなら、少なくともぼくたちは、そこから利益を得るべきではないと考えています」


「バニー・バニー」
写真提供:Gerard + Belevender

このレストランの最大の目標は、最終的に非営利にすることだ。店舗を間借りしたあと、トゥートゥラとジャクソンは、少人数のスタッフとひざを突き合わせ、不自由なく暮らすためには、給料や福利厚生の面で何が必要かと尋ねた。店では、フロアスタッフとバックヤードスタッフの時給は同じで、チップは接客後に公平に渡される。

「利益モデルの考え方は、変わっていくべきです」とトゥートゥラは述べる。バニー・バニーでは、レストランの経費と人件費を賄う以上の利益はすべて、周りの地域社会に還元するのが目標だ。

このように、これまでと根本的に違うレストランを経営することは、2人の「長年の」夢だった。ジャクソンは、新型コロナウイルスの流行が、その夢を叶えるきっかけになったことを認める。

「新型コロナが流行りだしたとき、私たちは勤務時間を減らして、『基本的に9時から5時まで働く』のをやめました。ジャスティンと私は家で過ごす時間を持てるようになり、庭の手入れもできました」とジャクソンは語る。「そういう時間の使い方ができるようになり、考え方が変わりました。誰もみな、楽しいことをしたり掃除をしたりする日や、翌週の仕事に備える日が必要なのです。働く場所をどう工夫したところで、レストランでの仕事は大変です。体を使うので、休みを取ることが何より大切です」 スタッフに本当にバランスの取れた生活をしてもらうために、トゥートゥラとジャクソンは、週4日の勤務体制を導入することにした。

週の勤務日数を減らすことから利益を寄付することまで、こうしたすべては、どのようにして実現できるのかと問われると、やり方次第だとトゥートゥラは答えた。

「投資は受けていません。それが、すぐにでも非営利モデルに移行できる大きな理由の一つです」と彼は言う。「親にはお金を返さなければなりませんが、自分たちがふさわしいと思う方法で、このビジネスを管理する自由はあります。それは、独立した事業者として大きなことだと思うのです」

彼はこう続けた。「いやになることも大変なこともありますが、5年後には、今の苦労のすべてが良い形で報われるでしょう。ぼくたちは、小さくても声を上げることで、この業界の働き方を変えたいのです」

 

この記事は、Food & Wineのオセット・バブールが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。