ESG投資、環境経営、脱炭素といった言葉がキーワードとなる昨今。オフィスの運用面から、地道に積み重ねる環境や持続可能な社会への取り組みも重要だ。そこで、今すぐできる環境保全への取り組みとして〈グリーン購入〉にスポットをあてる。

グリーン購入の4つのポイント

2000年5月、グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)が制定された。国等が自ら率先して環境負荷のできるだけ小さい製品を優先的に購入することで、需要面からも環境配慮型製品のマーケット拡大を促進することが目的だ。

「『環境に良い製品を買いましょう』というのがグリーン購入の肝であることは確かです」と話すのは、環境省・環境経済課の眞鍋秀聡氏。ただし、グリーン購入の概念を正しく理解するなら、4つのポイントを抑えて購入する必要がある。

1つ目が、購入の必要性を十分に考慮し、無駄なものを、そもそも買わない。2つ目に、真に必要なものについて、可能な限り環境負荷低減に資するものを購入する。

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出典:環境省

「1番、2番の順番が大事で、『環境にいいものだからたくさん買いましょう』では意味がありません。例えば、レジ袋をやめるからといって、エコバックを何枚も買ってしまうのでは本末転倒です」(眞鍋氏)。

1つ目、2つ目のポイントを踏まえた上で、3つ目、購入したものは長く使う。そして4つ目、最後に不要となった場合は、可能な限りリユース、リサイクルをし、どうしても廃棄せざるを得ないものは適切に処分する。

「そのモノを買うかどうかから、捨てる所まで全部含めて考えるのがグリーン購入です。正しく行おうと思えば、単に“環境に良い製品を買う”だけでなく、1~4のポイントを全てクリアすることが重要です」(眞鍋氏)。

国や地方公共団体だけでなく、企業や一般国民も、毎日何らかの製品やサービスを購入する。グリーン購入の考え方が広く一般にまで浸透すれば、環境配慮型製品のマーケットの拡大につながり、企業に環境負荷の少ない製品の開発を促すことにもつながる。グリーン購入は、誰でも、今すぐにできる地球環境保全への取り組みと言える。

グリーン購入法とは

「こうした〈グリーン購入〉を、少なくとも国の機関はやろうと。国の機関がグリーン購入をするために制定された法律がグリーン購入法です。その上で、地方公共団体においては『義務ではないですが、努力してください』と、企業や国民の皆さまについても『可能な限り、こうした製品を買うことが必要です』といったカタチで、チャレンジを促しているのが、この法律です」(眞鍋氏)。

グリーン購入法では、国等が重点的に推進すべき『環境物品等の分野・品目(特定調達品目)』と、その『判断の基準』を基本方針として定めている。2020年2月の時点で、紙類や文具類から災害備蓄用品、太陽光といった設備まで、22分野275品目について『判断の基準』が示されている。

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出典:環境省

「基本方針では、国が買う環境用品はどのようなものがふさわしいかを決め、毎年更新しています。ただ、これはあくまで国が買う場合のルールで、標準品と比較して環境負荷が低減している製品は他にもあります」(眞鍋氏)。

例えば、グリーン調達法では、トイレットペーパーは古紙100%が『判断の基準』になっているが、近年では森林認証紙といった原料を使用する考え方もある。企業や一般国民に向けては、グリーン調達法の『判断の基準』は、あくまで参考といったカタチで提示している。

国等の各機関は、この『判断の基準』に適合する製品の調達目標を設定し、調達実績を取りまとめ、公表する。

「こうすることでPDCAサイクルが回ります。目標と実績を明確にすることで、国民の皆さまの手本になることが目的です。率先して取り組んだ上で、国民の皆さまに、『義務ではないけれども、目標としてやってみてください』といったメッセージを発信しています」(眞鍋氏)。

地道な積み重ねが大事

企業や一般国民が〈グリーン購入〉に取り組む場合、調達品目や調達方法など、独自のルールを作ることが難しい。その場合、グリーン購入法の品目リストを参考にするのも1つの手だが、第三者機関による環境ラベルを活用するのも有効だ。

例えば、第三者認証であるエコマークは、製造事業者からエコマーク認定基準を満たしていることを証明する試験結果やエビデンスの提出を受け、中立機関の専門家や有識者等による厳格な審査を行っている。エコマークの認定基準は、その多くがグリーン購入法の『判断の基準』と上位互換の関係にあり、エコマーク認定商品はグリーン購入法の『判断の基準』の適合確認において、信頼性が確保されている。

「『環境に良い製品を買おう』と思っても、どれが実際に環境に配慮されているか分からない場合、こうした環境ラベルをうまく使っていただきたい。製品を購入する際に、エコマークのついているものを積極的に選ぶという方法もグリーン購入の主旨には合致しています」(眞鍋氏)。

環境省が調査した平成29年度実績では、上場企業の約8割が、すでにグリーン購入を行っているという。近年注目されるESG投資のCSR指標としてグリーン購入が使われていることもあり、一部上場企業における認知度は高まっている。ただ、広く一般国民にまで浸透しているかと言えば、まだ不十分な面もある。

「グリーン購入は誰もができる環境への取り組みです。最初はボールペン1本でも、標準品と比較して環境負荷が低減している製品を選ぶ意識が芽生えれば、その意識は車や家を買う時にも働くでしょう。行政の施策には、大きく一気にガツンと影響を与えるものもあれば、地道にやるべき施策もあります。グリーン購入は、地道な積み重ねが効いてくる施策だと考えています」(眞鍋氏)。

 

この記事は、環境ビジネスオンライン 2020年07月06日号掲載より、アマナデザインのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。