家から出られない子どもたちを励まそうと、素晴らしい方法を考えた少女がいる。

米コネチカット州ダンベリーに住むチェルシー・フェアは、昨年の8月、10歳の誕生日パーティに招いた友だちに、プレゼントの代わりに絵を描く道具がほしいと頼んだ。そして、集まったクレヨンやマーカー、紙、色鉛筆などをプラスチックの箱40個に仕分けし、ニューヨーク州のホームレスのシェルターに持っていった。子どもたちのうれしそうな顔に勇気づけられた彼女は、「チェルシーのチャリティ」と名付けた慈善活動を立ち上げた。

「娘は7歳の頃から、私や夫に『慈善活動をやりたい』とせがんでいました」 チェルシーの母親のキャンデス・フェアは、CNNにそう語った。「あの子はあきらめる様子もなく、2~3カ月おきに『チェルシーのチャリティはまだ始めないの?』と聞いてきました。10歳になったときもまた頼んできたので、私たちは、もうやらせてもいいだろうと考えたのです」

チェルシーは、お小遣いや「歯の妖精(抜けた乳歯を枕の下に入れておくと、お金に換えてくれるという妖精)」からもらったお金を貯めたり、Amazonの「ほしいものリスト(ほかの人が、リストの中から選んでプレゼントできる機能)」に、絵を描く道具をたくさんリストアップし、友人や親せきに見てもらうよう頼んだりした。すぐに寄付がたくさん集まり始めた。パンデミックになる前は、十分な寄付が集まるたびに、チェルシーは母親と一緒に仕分けして「アート・キット(お絵かきセット)」を作り、子どもたちがいるところへ車で運んで直接、手渡していた。届けるついでに子どもたちに絵のレッスンもして、自分にとって絵を描くことがなぜ大切なのか簡単に説明した。

米コネチカット州ダンベリーに住む10歳のチェルシー・フェアは、貧しい子どもたちにアート・キットを寄付する活動をしている。

写真提供:キャンデス・フェア

昨年の8月から今年の3月にかけて、チェルシーは母親と一緒に、マーカーやクレヨン、紙、ぬり絵、色鉛筆、カラーボールペンなどがたくさん入ったアート・キットを900個近く寄付した。

新型コロナウイルスのパンデミックにより、子どもたちへのストレスが増えている。そんな中、これまで以上に大切なのは、子どもたちが、今の新しい現実に順応することから生まれるさまざまな感情を、うまく処理できるようにしてやることだ。今はソーシャル・ディスタンスを守らなければならないため、チェルシーと母親は、アート・キットを郵送している。郵送を始めてから、米国の12の州にあるホームレスのシェルターや、学校、養護施設の子どもたち1500人以上に、アート・キットを送ってきた。

アートは、大切なこととして、いつもチェルシーの身近にあった。8歳のとき、家族のように慕っていた水泳の先生が、プールのシーズンのさなかに銃で撃たれて亡くなった。そのことによる心の傷を癒すため、チェルシーは絵を描き始めた。

心に傷を負った経験がある子がほかにもいることを知ったチェルシーは、絵を描くことをもっと身近にし、自分と同じような感情に向き合う人たちの手助けをしたいと考えた。

パンデミックのため、アート・キットが届くまで、いつもより少し時間がかかるかもしれない。しかし、各地の子どもたちが受け取るアート・キットは、学校に行けない今、代わりに自分の感情を整理し、エネルギーを注いでクリエイティブに表現する手段として役立っている。外出禁止令のため子どもたちと家にこもっている里親たちも、ありがたいと感じている。

「アート・キットを受け取る子たちがとても喜んでくれると分かっているので、私もうれしい気持ちです」とチェルシーはCNNに語った。「この活動のおかげで、人として間違いなく成長できたと思います。今の私の夢は、世界中の子どもたちに会って、アートを届けること。もしかすると、私たちがこの活動をやって、私たちの子どもたちも同じ活動をやったら、世界が平和になるかもしれません!」

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この記事は、Real Simpleよりハナ・ホンが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。