solar_sharing.jpeg
実証モデルイメージ図

千葉エコ・エネルギー(千葉県千葉市)は6月1日、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電設備)と電気自動車(EV)を組み合わせて活用し、都市近郊農村の低炭素化と災害支援モデルの構築を目指すプロジェクトを5月より開始したと発表した。

このプロジェクトは、同社が所有するソーラーシェアリングである千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機(千葉市)を実証拠点として実施する。一般的にソーラーシェアリングは、農地に支柱を立て上部に太陽光発電設備等の発電設備を設置して、農業と発電事業を両立することをいうが、このプロジェクトでは、ビニールハウス一体型の自家消費を目的とした太陽光発電設備を設置する。移動式蓄電池(スタート時は固定式蓄電池)を導入し、発電した電気は売電せず、ハウス内や電動農機具などで活用する。

このソーラーシェアリングとEVモビリティを組み合わせた電源と移動手段の確保により、災害時でも機能するモビリティの整備と、移動式蓄電池を用いた災害支援モデル(農村BCP)の構築を目指す。また、平時ではそれらを活用して人の移動や農産物等の輸送、除草管理など農作業の中でも電化が可能な分野で電動機器を最大限導入し、農業の低炭素化を目指す。2021年6月を目途に実証事業の成果を報告する予定。

台風による停電を経験した教訓を踏まえて発案

この農村地域での災害時に活用できる新たな再生可能エネルギーによる電源と移動手段を同時に確保する実証事業は、「令和元年房総半島台風」により地域一帯で8日間続いた停電を経験した教訓から発案された。

その背景として、全国的に給油所が減少傾向にあることや、自然災害の際に停電や交通網のマヒによって給油所が長期間機能しないことが、特に農村部のリスクとして顕在化したことをあげる。資源エネルギー庁のデータによると、全国的の給油所は、2014年度末の33,510カ所から、2018年度末は30,070カ所に減少している。今後、移動手段としての車への依存度が高い農村部において、災害時でも機能するガソリン車に代わる交通手段が求められると予想される。

農村における再エネ拡大に向けた方法として提案

また、千葉エコ・エネルギーは、資源エネルギー庁のデータより、日本の農業に直接投入されるエネルギー資源の94.1%は化石燃料であると試算。世界的な脱化石燃料の潮流の中で農業のエネルギーシフトは急務であり、そのためには農村における再生可能エネルギー電源の拡大が必要だと考える。

今回の実証拠点である千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機(千葉市)は、大規模ソーラーシェアリング設備として、2018年3月に竣工。設備下の農地でにんにくを栽培してきた。一方、農地で使用する農機具には化石燃料が使用されてきた。同社はこの実証事業により、再生可能エネルギー電源による農機具の電動化という方法も提案したいと考えている。

千葉エコ・エネルギーは、千葉大学発の環境・エネルギー系ベンチャー企業。同社のソーラーシェアリングに関する取り組みは、農林水産省の優良事例としても紹介されている。ソーラーシェアリングは、太陽光発電と農業が共生する新たな地域活性化の手法として注目をされており、同社では全国各地で同様の取り組みを考える企業や行政の活動を支援している。

 

この記事は、環境ビジネスオンライン 2020年06月05日掲載より、アマナデザインのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。