国連の教育機関であるユネスコ(UNESCO)は、インドで開催される会議TECH(Transforming Education Conference for Humanity)のスポンサーになっている。この会議の目的は2つある。1つは、他者への思いやりや気づかいなどの社会的能力を身につけるための「対人関係能力育成プログラム(Social and emotional learning:SEL)」を広めること。もう1つは、より平和で持続可能な社会の実現につながるデジタル技術(ビデオゲームなど)の活用だ。
この会議を主催するUNESCOマハトマ・ガンジー平和と持続可能な開発のための教育研究所(UNESCO MGIEP)は、こうした取り組みの一環としてゲームを活用し、国境を越え、問題を解決する能力を高め、共感力を育もうとしている。
同研究所は、「対人関係能力育成プログラム(Social and emotional learning:SEL)」を通じて、他者の気持ちを理解する方法などを学ぶ機会を子どもたちに提供している。また、このプログラムは、デジタル技術を活用しながら、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標4「質の高い教育をみんなに」の達成の一助にもなっている。
最近、多くの研究でビデオゲームは単に楽しいだけでなく、教育にも非常に役立つことが分かってきた。UNESCO MGIEPの「リシンキング・ラーニング・プログラム」では、ゲームをしながら自分のペースで新たなスキルを習得できる。それだけでなく、五感をフルに使って熱中しながら、インタラクティブに学ぶことができるため、学ぶ過程がより魅力的になる。学習プログラム用のゲームは、AIに対応したオープンソースのプラットフォーム Framerspace上で実行される。さらに、開発グループは、このプラットフォーム上でゲームを設計するだけでなく、Florence(フローレンス)などの他のゲームに連動した教育カリキュラムも作っている。
同研究所が開発したゲームの一例
- ワールドレスキュー:SDGsに着想を得た、研究に基づくナラティブゲーム。物語はケニア、ノルウェー、ブラジル、インド、中国を舞台に、テンポよく展開する。プレイヤーは5人の若いヒーローに出会い、彼らが世界的な問題(難民、病気、森林破壊、干ばつ、汚染など)をコミュニティのなかで解決していくのを助ける。
- キャンターズワールド:このゲームでは、包括的な豊かさの指標(IWI)について学習するとともに、この指標と他の指標の関係を学ぶ。このゲームで、プレイヤーは政策を選び、短期的な結果と、長期的な持続可能性のせめぎ合いを体験する。プレイヤーは国でたった1人の政策立案者として、自国の具体的な目標を決定していく。
UNESCO MGIEPは、教育テクノロジーに関する国際イベントTECH(前述)をインドで毎年開催している。TECH 2019は、12月10日から12月12日までアンドラ・プラデシュ州の港湾都市ヴィシャーカパトナムで行われ、12月8日と9日にはワークショップも開かれる予定だ。
このイベントは、インドのアンドラ・プラデシュ州政府と共同で開催される。TECH 2019の科学諮問委員会には、SEL、データ科学と人工知能、平和教育、地球市民、持続可能な開発などの分野の著名な専門家が参加。Games for Changeの社長スザンナ・ポラック、Headaiの会長ハリ・ケタモ、ブリティッシュ・コロンビア大学教育学教授キンバリー・ショーナート–ライクル、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の教育カレッジでオンライン学習のアシスタントディレクターを務めるミラ・トマス・フラーらが名を連ねている。
昨年は50ヶ国から参加者が集まった。今年は以下の講演者が決まっている。
- ジェシー・ストンメル:メリーワシントン大学教育 学習テクノロジー部門 エグゼクティブディレクター
- パトリシア・ジェニングス:バージニア大学 カリキュラム・指導・特別教育学部 准教授
- エリオット・ソロウェイ:ミシガン大学 コンピュータサイエンス・エンジニアリング学部 教授
デジタルゲームを使えば、テクノロジーの力で子どもたちを夢中にさせながら、優れた教育をおこなうことができる。教育者は、継続的に子どもの評価を行いながら、知的・情緒的な知性を発達させ、学問と文化の垣根を超えた学びを実践することが可能となる。
この記事は、VentureBeatのディーン・タカハシが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。