スーダンの難民キャンプの近くで、避難所の提供や、難民たちの住まい・燃料の確保の目的で、多くの木が切り倒されている。環境問題の視点からは良くない動きだが、こうしないと生きられない人々が大勢いる。木を切らざるをえない人々たちを止める手立てはないのか? 現場に向かい、当事者たちの声を聞いた。
Source:Digital Journal
ブルドーザーが木々を次々となぎ倒していく。その目的は、エチオピア北部のティグレ州で勃発した紛争から逃れてスーダンのウム・ラクバ難民キャンプに身を寄せる難民たちに、避難所を作る土地を確保し、薪を提供するためだ。
難民キャンプの管理者が操作する2台のブルドーザーは、騒がしい音を立てながら進み、わずか1時間で計50メートルに及ぶアカシアの木々をなぎ倒した。倒された木々はあっという間に難民が持ち去っていき、小屋を作るための資材にされる。
ティグレ州北部からスーダン東部に逃れてきた難民は数万人に及ぶ。その一人であるザイエット・ワリ(65歳)は、木を使うほかに選択肢はないと語る。
「夫のために家を作りたくて、息子と一緒に地面に倒れている木を集めています。夫は重い病気で、日差しから守ってあげなければなりません」と彼女は言う。
一方で、スーダンのガダーレフ州保健・社会開発省で長官を務めるアミラ・エルガダルは、大変な事態だと身を震わせる。
「11月のはじめから何千人もの難民を受け入れてきましたが、その代償は重いです」とエルガダル。
「毎日65平方メートルもの土地から木々が失われていて、環境に深刻な影響を与えています」と彼女はAFP通信に語った。
ガダーレフ州は砂漠特有の気候で、雨季には土地が耕される。だが、それ以外の時期は乾燥がひどく、地面にはひび割れが生じる。
マットレスやベッド、持ち物を木の近くに持ち運び、木陰に座る人々(スーダン東部ガダーレフ州ウム・ラクバ難民キャンプ)。エチオピア・ティグレ州の紛争から数千人の難民が逃れてきた。
アシュラフ・シャズリー(AFP通信)
このような降雨量の少ない地域では、アカシアの木は生態学の観点から重要性が高い。そのため、アカシアの木々が消えると、さまざまな動植物に悪い影響が及ぼされる。
「環境保全に携わっている組織なんて、ここには一つもありません」とエルガダルは指摘する。
「テントのように木材を使わない避難所を提供したり、薪を使わずに済むようにガスボンベを配ったりしてほしい。私たちは、国連の難民高等弁務官事務所とスーダン政府難民担当局にそう依頼しました」と彼女は説明する。
– 「大惨事」 –
環境に打撃を与えているもう一つの問題は、ひどい衛生状態だ。「全部ひっくるめて、環境にとって大惨事です」とエルガダルは嘆く。
スーダン東部ガダーレフ州保健・社会開発省で長官を務めるアミラ・エルガダル。木々が切り倒されていることにショックを受けているという。
アシュラフ・シャズリー(AFP通信)
何を優先するかは、立場によって異なる。
難民キャンプの運営者にとっては、難民に避難所を提供することが第一だ。同キャンプの仮設住宅の数はすでに2100軒にのぼり、さらに3000軒の建設が予定されている。
現在1万人に上る同キャンプの難民にとっては、屋根付きの家があることと、食事を作るための薪があることが、最大の関心事だ。
木陰に座っていたアバディ・グラジディエ(70歳)は、木の切れはしをかき集めて調理に使っているという。
「母国では伐採が禁止されていたので、今まで木を切ったことはありません。でもここでは、ほかにどうしようもないんです」と彼は打ち明けた。
2020年11月4日、エチオピアのアビー・アハメド首相はティグレ州に「法による」秩序を取り戻すと言い、同州の指導者らに対する軍事攻撃を始めた。以来、4万5000人を超える人々がこの地からスーダンに逃れてきた。
避難してきた難民は、焼けつくような日差しを避けるために木を探し求め、木陰に得た自分たちの居場所を必死になって守る。彼らの中には、数週間のうちに自分たちで木を切りはじめる者もいる。
カンファ・アマリ(32歳)は、友人らとともに斧を手に伐採に出かける。
「今日は小高い丘に登って木を切ってきて、みんなで分けました」と彼は話す。
現在1万人に上る難民キャンプの住人にとっては、屋根のある家があることと、食事を作るための薪があることが最大の関心事だ。
アシュラフ・シャズリー(AFP通信)
彼らが集めた木材は、家を建てるためよりも調理のために使われる。小屋の外には、そうした木材が山積みになっている。
「もちろん、石炭やガスボンベをもらえるなら、木には手を出しません。でも、どうすれば? 僕らだって、食べなければなりません」とアマリは語った。
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