2015年9月に開かれた国連サミットで、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。その中で掲げられたのが、17の国際目標を盛り込んだSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)だ。

国連での採択後、世界各国でSDGsの取り組みが広がり、日本でもSDGsの達成に向けて国をあげて取り組みが実施されることになった。現在、日本ではSDGs達成に向けた活動が実施されている。今回は国内に注目してその取り組みを紹介したい。

日本政府が行っているSDGsへの取り組み

SDGsを盛り込んだ「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の国連での採択は、開発途上国だけでなく、先進国にも影響を与えた。日本も、2030アジェンダの採択を受けて、SDGsの取り組みを推進している。

日本政府による取り組みとしてあげられるのが、「実施体制の構築」「ジャパンSDGsアワード」「SDGs未来都市」の3つだ。この項目では、その3つを詳しく解説していく。

実施体制の構築

日本政府は、2016年にSDGs推進本部を設置して、同年の5月に第1回会合を実施した。年2回のペースで行われる会合で、2016年12月には「SDGs実施指針」を策定している。

さらに、8回目の会合となった2019年12月にはSDGs実施指針改定版が策定された。4年間の日本でのSDGsの取り組みと現状を分析し、改定したものである。

SDGsには17の目標があるが、改定版では、17目標を日本向けに再構築した。人間、繁栄、地球、平和、パートナーシップに関わる※8つの優先課題と主要原則が改めて提示されることになった。

8つの優先課題とは以下が挙げられる。

■人間(People)
1.あるゆる人々が活躍する社会、ジェンダー平等の実現。
2.健康・長寿の達成。

■繁栄(Prosperity)
3.成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション。
4.持続可能で強靭な国土の質の高いインフラ設備。

■地球(Planet)
5.省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会。
6.生物多様性、森林、海洋等の環境の保全。

■平和(Peace)
7.平和と安全・安心社会の実現。

■パートナーシップ(Partnership)
8.SDGs実施推進の体制と手段

出典:外務省国際協力局:持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/SDGs_pamphlet.pdf)

また、「SDGsの実施指針」をもとに、全省庁では「SDGsアクションプラン」を毎年策定し、国内外で協力できるようSDGsの実施を進めている。また、政府の政策に反映できるよう、「SDGs推進円卓会議」も開催。そこでは、官民さまざまな団体による意見交換の場も設けている。

ジャパンSDGsアワード

2017年には、SDGs推進本部によって「ジャパンSDGsアワード」が創設された。日本に拠点を置く企業や団体のうち、SDGs達成に値する優れた取り組みを行った組織を表彰するものだ。

これまでのジャパンSDGsアワードでは、企業に限らず、地方自治体や教育機関、NGOやNPOなど、さまざまな団体が表彰を受けてきた。

このように国内でのSDGs達成に向けた取り組みを「見える化」することによって、さまざまな企業や団体でのSDGs達成に向けた活動を促進させるのがジャパンSDGsアワードの目的だ。

外務省のページにはジャパンSDGsアワード(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/award/index.html)の概要や過去の受賞歴が記されている。

SDGs未来都市

SGDs未来都市とは、2018年から2020年までに、SDGs達成に向けた優れた取り組みを選定する制度のことだ。SDGs未来都市の中でも、先導的な取り組みを実施する都市は「自治体SDGsモデル事業」に選定され、資金面での支援を受けられるようになっている。

自治体のSDGs達成のための取り組みを拡大させるとともに、SDGsを原動力とした地方創生を促進するのもSDGs未来都市の狙いだ。2018~2020年で93の都市がSDGs未来都市に選定されている。

今後もSDGs未来都市だけにとどまらず、自治体と連携したSDGsの活動が持続されることが予想される。

SDGsの目標ごとの取り組み

これまでの項目は、日本国内でのSDGsの実施体制を紹介してきた。次に、SDGsの17の目標のうち、日本で取り組んでいるSDGs達成に向けた国際協力の例を、分野別に紹介する。

保健

保健は、人々の生活の基盤を形作るものであり、人間開発や社会開発に欠かせない分野だ。SDGsの目標のうち、「保健」は国際的に主要な目標のひとつと位置付けられている。

日本政府は、国際社会の抱える保健の問題に貢献するため、2015年「平和と健康のための基本方針」を策定した。

基本方針では、日本の保健・医療人材の知識やスキルを活用し、公衆衛生危機・災害などに対しての強靭な国際健康安全保障体制の構築、※ユニバーサル・ヘルス・ガバレッジを達成することを中心に据えている。

※ユニバーサル・ヘルス・ガバレッジとは、すべての人が基礎的な保健サービスを、負担可能な費用で必要なときに受けられること。

これらの基本方針をとおし、国際機関などとの協力強化により、感染症対策の強化のための取り組みなどを実施している。

教育

SDGsの採択に合わせて、「平和と成長のための学びの戦略」を日本政府は発表した。

「みんなで支えるみんなの学び」をビジョンのもと、乳幼児教育、初等教育、中等教育、高等教育、就労・起業の生涯学習をとおして、「学び合いを通じた質の高い教育」を実現することを展望として掲げている。

SDGsの目標のひとつである、すべての人が質の高い教育を受けられるように、同戦略では、国際的な教育協力と拡大も重点に置かれた。JICA(国際協力機構)やNGO(非政府組織・民間団体)をとおして、教育施設の整備や教育支援を国際協力として行っている。

女性

2016年5月、日本政府は「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表した。重点分野として基本原則に据えられたのが、女性や女児の権利の尊重と改善、女性の能力発揮のための基盤整備、政治・経済・公共分野での女性参画とリーダーシップ向上の3つである。

SDGsのゴールであるジェンダー平等と女性や女児の能力強化の分野は、すべての目標達成に不可欠と考えられることから、国際的にも重要度が高い。「女性の活躍推進のための開発戦略」は、この分野における国際協力を強化するのも目的だ。

日本においても推進が強化され、女性に配慮したインフラ整備、母子保護サービス拡大、女性が活躍できる分野の拡大など、質の高い成長が進められている。

防災

日本はこれまで、さまざまな自然災害を経験してきた。SDGs目標のひとつ、防災分野では、日本が経験した過去の自然災害で培われてきた知識や復興技術をもとに、緊急援助、防災対策、災害復旧などで積極的に国際防災協力を推進している。

2019年のG20大阪サミットでは、「仙台防災協力イニシアティブ・フェーズ2」を、当時の首相である安倍総理大臣が発表した。

同取り組みは、日本が防災先進国として、少なくとも2022年までの4年間で途上国の500万人の被災者を支援し、次世代の人材教育や防災教育を進めるものだ。防災について、国際社会へより一層貢献する姿勢を示した。

海洋環境

近年、プラスチックごみ流出による海の生態系への悪影響が、国際社会における大きな課題となっている。日本もまた、海洋国家として、海洋環境の保全、持続可能な利用を重視するようになった。

日本が議長国となった2019年のG20大阪サミットでは、海洋プラスチックごみの問題を主要課題のひとつに選出。G20に参加した各国に呼びかけ、プラスチックごみによる汚染を2050年までにゼロにするビジョンを共有し合意に取りつけた。

プラスチックごみの問題は、今や排出量の多い新興国や途上国をも含めた課題である。新興国や途上国を含めたG20で合意に至ったことは、海洋環境改善のための第一歩として成果を収めた。

これらを軸に、現在でも日本全体でさまざまなSDGsの取り組みが実施されている。

協和キリンのSDGs達成への取り組み

これまでは日本全体のSDGsの取り組み事例を述べてきた。しかし、SDGs17の目標達成には政府だけでなく民間企業の活動も不可欠だ。

キリングループの一員である協和キリンでは、社会と共有できる新しい価値のために、CSV経営をとおして積極的なSDGsの取り組みを実施している。
キリングループが目指す先は、SDGsの取り組みをとおして、世界のCSV先進企業となり、食から医の領域で価値を創造し続けることだ。そのために、重要課題を明確にし、社会からの要請を確実に認識して取り組めるようにしている。
詳しい取り組み内容についてはこちら(https://www.kirinholdings.co.jp/csv/commitment/)のページで詳細を解説している。

まとめ

2030アジェンダ採択から、各国でSDGsの取り組みが行われ、日本でもSDGs推進本部が設置されるなど国をあげての取り組みが行われてきた。国は、SDGs達成のための指針を示してきたが、実際に行動に移すのは、企業や団体、そして私たち個人だ。

SDGsを国際的に達成していくためには、ひとりひとりが意識し行動し、企業のSDGsの取り組みに意識を向ける必要がある。