高齢化の度合いを示す言葉として、高齢化社会、高齢社会、超高齢社会などがある。日本は2007年に高齢化率22.7%となり、超高齢社会を迎えた。

日本における急速な高齢化は、医療や福祉、社会保障などに非常に大きい影響を及ぼす問題だ。国民全体が超高齢社会に向き合い、将来を見越して行動していくことが欠かせない。

本記事では超高齢社会における課題や対策について解説していく。

出典:「人口推計(平成21年10月1日現在)」(総務省統計局)

超高齢社会の現状

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ここでは、超高齢社会の定義をもとに、他国と比べた日本の高齢化の度合いについて解説していく。

65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占めている

超高齢社会は「65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占めている」と定義されている。人口の5分の1以上が高齢者という状況だ。

日本は2007年に超高齢社会を迎え、現在の高齢者の割合は全人口の30%近くにも上る。年々増加傾向であり、2036年に33.3%、2065年には38.4%に達すると推計されている。

ここ数十年の間は、超高齢社会の問題はより深刻さを増していくと考えられる。

出典:「令和2年版高齢社会白書(全体版)」(内閣府)

他国と比べた日本の高齢化率

一般的には先進国の方が超高齢社会になりやすいといわれており、スウェーデンやドイツ、フランス、アメリカなどは高齢化率が高い国だ。

日本は、これらの国々と比べても圧倒的に高齢者の割合が多い。世界的にみても、日本の高齢化は異例で深刻な問題であるといえる。

超高齢社会における課題

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ここでは超高齢社会の課題について具体的に解説していく。

医療や介護の負担が増加する

高齢化が進めば進むほど医療機関や介護サービスを利用する人が増えるため、介護にかかる家族の負担が増加してしまう。

一方、日本では高齢化とともに少子化も進行している。医療や介護でも人手不足が深刻化しており、将来に渡って安定的に医療従事者を確保できるとは限らない。

若者の医療従事者の数が減少すると、高齢者が高齢者を治療したり、介護したりしなくてはいけなくなる。今までの社会と同じように、高齢者が若者の手を借りることができなくなってしまうだろう。

もちろん、元気な高齢者がそのように活躍するのは望ましいことだ。しかし、すべての高齢者がそのように活躍できるわけではない。少子高齢化が進むことは、医療や介護面で高齢者自身の負担が増えることにもつながりかねないのだ。

社会保障のバランスが崩れる

日本では社会保障の制度を整えて、高齢者が医療機関や介護を利用しやすいようにしている。しかし、今後も高齢者の数が増加すると、社会保障が追いつかなくなる可能性が高い。

現在は社会保障の「給付」と「負担」のバランスが整っている状態だ。しかし、このバランスが崩壊すると、国民の社会保険料の負担が増加する可能性がある。さらに、高齢者が医療を満足に受けられない事態にもなりかねないだろう。

社会保障の制度そのものが成り立たなくなってしまうのだ。

経済活動が悪化する

少子高齢化が進むにつれて、現役世代の労働力は減少し、経済成長が鈍化していく。

日本は他国と比べても経済発展が目覚ましい国であったが、将来はそれが低迷していくかもしれない。

高齢者が安心して生きるのが難しくなる

60歳以上の高齢者のうち、4分の3近くが経済的に心配なく暮らしているというデータがある。しかし、医療や介護の負担が増加し、家計に影響が出ることを心配している声も多い。

こういった状態で先ほど説明したような社会保障制度の崩壊が起こってしまうと、より高齢者が感じる不安は大きくなるだろう。

安心して生きられる老後というものが、なくなってしまう可能性があるのだ。

超高齢社会への対策

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超高齢社会が抱えている問題は非常に多い。「経済面」「健康面」など様々な観点から問題を把握し、解決策を考えていく必要がある。

解決のためのアプローチはひとつではない。超高齢社会が抱えている問題は複雑であり、多種多様な対策を継続的に行う必要があるだろう。

ここでは超高齢社会が抱えている問題への対策について解説していく。

健康寿命の延伸を図る

日本では、2013年6月に閣議決定した「日本再興戦略」と「健康・医療戦略」において、健康寿命の延伸を掲げている。

同年、2025年に向けて取りまとめた「「国民の健康寿命が延伸する社会」に向けた予防・健康管理に関する取組の推進」では、以下の取組内容が公表された。

・高齢者への介護予防等の推進

(例)介護・医療情報の見える化、認知症早期支援体制の強化 など

・現役世代からの健康づくり対策の推進

(例)レセプト・健診情報などを活用したデータヘルスの推進、特定健診・特定保健指導などを通じた生活習慣病予防の推進 など

・医療資源の有効活用に向けた取組の推進

(例)後発医薬品の使用促進、ICT活用による重複受診・重複検査などの防止 など

出典:「平成26年版厚生労働白書 健康長寿社会の実現に向けて~健康・予防元年~(本文)」(厚生労働省)

また、高齢者の健康を考える上で重要なのはロコモティブシンドロームの予防だ。ロコモティブシンドロームとは、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指し、要介護の原因となる「衰弱」「骨折・転倒」「関節疾患」などが該当する。

高齢者に対しても自治体で運動施設を無料開放したり、ウォーキングのイベントを開催したりして、運動が習慣化するように働きかけていくことが欠かせないだろう。

高齢者の就業を安定させる

働きたい高齢者に対して安定した就業を提供することができれば、労働力不足の解消につながる。一部の高齢者が社会保障制度の担い手となることで、経済的な負担を現在の状態で維持することができるかもしれない。

65歳を超えても安定して働ける環境が整っていることは、「生きがいがほしい」「余裕のある生活がしたい」と考える高齢者にとってもメリットが大きい。

街づくりの見直しを行う

高齢者が安心して暮らせるようにするためには、街づくりを見直すことも大切である。

日本の公共施設や介護施設では、バリアフリーや手すりの設置など、高齢者が利用しやすいような取り組みが推進されている。

しかし、まだまだ不十分なところも多い。高齢者が利用しづらい場所や建物が数多くあるのも事実だろう。超高齢社会の問題に備えるには、すべての人が利用しやすいように街づくりを見直していくことが重要だ。

高齢者の社会参加を推進する

高齢者の孤立や孤独を防ぐには、社会参加を促し、人と関わり合う機会をつくることが必要だ。社会参加を通じて楽しみや生きがいを得ることで、心身の健康にもつながる。

社会活動には、ボランティアや地域行事、文化活動、お稽古、趣味などが挙げられる。

内閣府の60代以上を対象とした調査では、「社会的な活動をしていてよかったこと」について、「新しい友人を得ることができた」(56.8%)「地域に安心して生活するためのつながりができた」(50.6%)が高い割合を占めていた。

出典:「平成30年版高齢社会白書(全体版)」(内閣府)

高齢者の社会参加を推進することには数多くのメリットがある。地域全体で支え合いながら、安心して社会活動に参加できる環境をつくることが重要だ。

まとめ

日本は2007年に超高齢社会を迎え、今後も深刻化していくだろうとの見込みだ。社会保障や経済成長、高齢者の孤独感などの課題が挙げられる中、若者・高齢者に関わらず、地域社会全体で支え合うことが重要だ。

高齢者にとって不便や不安を感じる生活環境になっていないか、個々人で想像し気が付けることもある。どのように人々の新たなつながりを生み出していくかを考え、すべての人が安心・安全に生活できる社会の構築を目指していくことが地域社会にとって必要だろう。